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「はい着たよ」
試着室のカーテンを開けてギャラリーに見せてやる。
神威を見た瞬間、ニヤニヤしていた二人はスン……と興味が失せた顔になった。Aがつまらなさそうにぼそりと感想を漏らす。
「なんだろ……顔のせいであんまりダサくない……」
「せっかく着てやったんだからもうちょっと何か反応しなよ……」
二人の薄い反応に神威は思わずツッコミを入れてしまった。
そんなこんなで、神威も着せ替え人形をさせられた挙句にやっと買う服が決まった。
というか、完全にAの好みに仕上げたのであった……。
そして、最後にAの買い物である。
これは二人の買い物の倍の時間がかかる。
Aは洋服をあまり着たことがない。
地球にいた時は着物を着て生活していたし、第七師団にいる時はチャイナ服を着ている。
つまり、洋服を選び慣れていない。
目に入るもの全てが気になってしまう。
ということで、一番最初に目についた店にとりあえず入ってみる。いかにも女の子らしい、ガーリーな店だった。
Aは白いワンピースを選んで試着室へ入る。
神威と阿伏兎は疲れた表情で静かに待つ。言葉を発する体力も残っていない。
そして。
「どう?」
Aが試着室のカーテンを開ける。
神威は息を飲んで固まった。
ワンピースのシルエットがAの華奢な身体を際立たせている。可憐で清楚な白ワンピは彼女の魅力を最大限に引き出し、裾の繊細なレースが少女らしいあどけなさを感じさせる。
つまりは、見とれてしまったのだ。
思考停止して固まっていると、Aが口を尖らせて不満を漏らす。
「ちょっと神威、コメントに困ったからって無言は傷つくよ〜」
「……いや、違うよA。あんまりにも似合っているから言葉を失ってしまったんだ」
神威は慌てていつもの飄々としたさまを取り繕って爽やかに返す。
しかし、それは表面上の社交辞令にも聞こえてしまうということで。
「ふーん、お褒めに預かり光栄でーす。阿伏兎、どう?」
案の定、Aは飄々とした態度を表面上の言葉と受け取った。
なので律儀にコメントしてくれそうな阿伏兎に意識を向ける。
「姐さんはホント何着ても似合うよなァ」
「そうでしょそうでしょ!」
ポーズを決めてふふんと鼻高々に阿伏兎へ見せびらかすA。
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作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy
作成日時:2024年3月25日 21時