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二人の茶番が終わったところに綸榭が口を挟んだ。
「……お二人さん、この道は崖に続いてるけど、プランCはどうする?」
綸榭に言われて辺りを見回すと、いつの間にか街を抜けて林のような場所を走っていた。それでもアレは追ってきている。
プランAもBもその場のでっち上げな訳だから、当然プランCなんてあるはずもない。このまま行ったら崖で行き止まり。
……まぁ、夜兎の身体能力なら何とでもなるのだが。
「なるほど、崖の向こうは海なんだね」
Aは抱えられて両手が空いてるので、地図を広げながら現在地を確認している。
そして、即席で考えたプランCを口にした。
「水があるなら話は早い。タコには海にお帰り願おう。そうすればあの汚れも少しは綺麗になるでしょ」
作戦の詳細を夜兎二人に説明し、後のことを任せる。Aのやることと言えば神威から落とされないように大人しくしておくことである。
そして、崖が見えた。
きらきらと輝く青い海が向こう側に広がっているが、今の彼らに景色を楽しむ余裕はない。
神威と綸榭は崖っぷちで立ち止まり、エイリアンが追いつくのを待つ。
エイリアンはどんどん迫り、あと少しの距離まで追い詰めてきた。
ギリギリのところで、二人は同時に上へ飛ぶ。
エイリアンは急に止まることができず、そのまま海へと真っ逆さまに落ちていった。
その間に神威と綸榭は近くの海岸に着地する。
神威はAを安全な場所に下ろした後、消波ブロックを拾ってエイリアンに向かって投げつけた。
綸榭も同じように消波ブロックを投げる。
どぼん、と大きな音と水しぶきを上げながらエイリアンは消波ブロック二つの重みに押さえつけられて沈んでいった。
「死ぬかと思った……」
Aは疲れた顔で呟いた。
「アンタはこれから一人で急にいなくなるの禁止。俺がいない時いっつも変なのに巻き込まれてるでしょ」
「えー、部下のプライベートまで報告させてついてくる上司とかパワハラでーす」
「人がせっかく……」
心配して言ってるというのに。酷い部下だ。
綸榭はそんな二人を生暖かい目で見る。
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作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy
作成日時:2024年3月25日 21時