【神威】第七師団団長の秘書様［4］ (ページ2)

今日:82 hit、昨日:80 hit、合計:4,567 hit

28.買い物は苦行ページ2

「阿伏兎、その格好休日のお父さんみたいだね。こっちのワイシャツはどうだろう……このジャケットもいいね」

　男性向けのアパレルショップでAの着せ替え人形をさせられている阿伏兎。もう何着も試着させられて、そろそろ顔がやつれ始めている。

　対照的にAは元気だ。あーでもないこーでもないと阿伏兎の服を選んでいる。

　神威は人形と化した阿伏兎を見て面白がっている。ちょくちょく似合わないだの変だのと茶々を入れてくるから、阿伏兎はその笑顔にムカついている。

　しかし、阿伏兎が終われば次は神威の番だ。笑っていられるのも今のうちだと思えば耐えられる。

「もう俺は何でもいいからよォ、さっさと買って早く団長の番にしようぜ」

「だめ。ちゃんとしっくりくるやつを見つけ出さないと。なんていうかね、運命の出会いをまだ果たせてないのよ」

「なんじゃそりゃ……」

　服選びに運命の出会いもクソもあるか、なんて遠い目で考える。
　その後も何着か袖を通して、やっとファッションリーダーが頷いた。これでやっと解放される。

「終わった……」

「第七師団の副団長ともあろう人が情けないねェ」

　どっと疲労を感じて阿伏兎はだらしなく歩く。そしたら神威に馬鹿にされた。そんなことを言っていられるのも今のうちだ。

　と、いうことで、お次は神威の洋服選びである。
　Aが選んだ服を次々と試着させていき、嫌味のように一言放つ。

「やっぱ神威は顔がいいから、何着ても似合うねぇ〜」

「顔の善し悪しなんて戦闘の強さと関係ないからどうでもいいよ」

「聞いた阿伏兎、このムカつく余裕な態度」

「ダセェ格好させたら上手いこと中和できねェか？」

「いいねそれ。一番ダサいコーディネート試してみよう」

「アンタら俺に喧嘩売ってる？」

　神威の言葉を華麗にスルーしてAはダサい組み合わせを持ってきた。ニヤニヤしながら手渡す。

「はい、これ着てみて」
「ハァ……」

　神威は溜息をつきながらも従う。とっとと終わらせたい。それが彼の最優先事項である。