おじさん天使の憂鬱。3

Sweet or Bitter？105 ページ8

Side サトシ


まーくんの、突然の涙に
びっくりして
思わず、抱きしめようとした
カズ。

は！って
われに返って
持て余した両手を
不自然に、自分の胸の前で組む。

..そのまま、抱きしめてやればいいのに。


「お前..何泣いてるんだよ。」

「ふ..ふげ..
　ひっく..ふっ..ふえっ..。」

「..きったない泣き声..。」

あっという間に
ぐちゃぐちゃ、びちょびちょになった
まーくんに
カズは、ふわんって
表情を甘くした。

「だってぇ..うれしい..
　これ、つくって、くれた..
　ん、でしょ？」

「ほとんど、ジュンくんがね。」

ほら、かじってみなさいよって
カズが、ひとつ、差し出した
クッキー。

それを、ぎゅーって、くちを結んで
ぶんぶん、首を振って
拒否する、まーくん。

「だ、だめ！も、も、もったいない！」

「そんなことないだろ。
　クッキーなんだから。

　それに、ほら
　大埜さんの、サトシ、の、さ、だから。
　もったいことなんか、ないない。」

なんだよ、それ。
ひでーやつ。

でも、まーくんが
きらきらのまつげの隙間から
こっちを、見るもんだから。

食べてみなって
頷いてみせる。


ぱくん。


「あ、おいひぃー。」

焼きたてのクッキーは
まだ、あったかかったみたい。

ほふ！って
ふくらんだ、まーくんのほっぺが
ほんのり、桃色になる。

そんな、まーくんを囲んでいる時間が
たまらなく、あったかい。



「ほら、カズは
　ほかにも、言うことあるだろ？」

一件落着、みたいな雰囲気を
まつじゅんのひとことが
一変させる。

カズの舌打ちが
聞こえそうな事態。

「まー。
　ほら、カズに、お手紙に書いたこと
　直接、言ってみな。」

「え！」

「お返事もらうんだろ？
　特別、フライングしてもらえ。」

「ふ、ふらいんぐ..。」

ほら、と
背中を押されて。

あー

もう、まーくんは
やる気満々になってるよ。

「カズくん..。」

「いい、まー。
　言わなくて、いいから。」

「カズくん、すきです。
　つ、つ、つ..
　つきあってください！！」

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