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さっきのは夢なんじゃないかって。
そう思いながらもはやる気持ちを抑えきれず、私はバイトが終わった後すぐに帰り支度をして店を飛び出した。
「お疲れ」
「っ…」
ほんとに居た。ほんとに待ってた。
夢じゃないんだ。
「時間平気?」
「…うん」
「じゃあここじゃアレだからどっか入ろっか。お腹空いた?」
「…うん」
「フハッ(笑)さっきからうんしか言わへんやん。ま、無理矢理にでも連れてくけど」
悪戯っぽく口角を上げて、紫耀くんは私の手を取った。
「ねぇ、ここ外だよ!?」
「へーき。もう遅いし。それに、こうでもしないとまたAちゃん逃げてってしまいそうなんやもん」
「………」
「もう逃がさへんから」
きゅっと力のこもった手。
握り返したいと思ってしまった。
でも、僅かに残ったくだらない意地が私の邪魔をする。
馬鹿だな。
逃げようと思えば逃げられるのに。
そうしない時点で答えは明白なのに。
意地っ張りな私に「分かってるよ」とでも言うかのように、紫耀くんが優しく微笑んだ。
少しだけ前を歩く紫耀くんに手を引かれながら、気づかれないように少しだけ泣いた。
もう、それほど好きが限界だった。
紫耀くんが連れてきてくれたのは個室があるしゃぶしゃぶ屋さん。
「お肉好きやろ?」
私のために選んでくれたのかななんて、そんな些細なことでまた泣きそうになる。
私こんなに涙もろかったっけ。弱かったっけ。
全部紫耀くんのせいだ。
紫耀くんがパパっと注文を済ませて、二人きりの個室に静寂が流れる。
「ごめんな、今日。急に行って」
「…ビックリした」
「ごめん。でも、ああでもしないとAちゃん会ってくれないやんか。夜公演終わって急いで来た」
「なんでそこまで、」
「ほんまにな(笑)でもそんくらい必死なんよ。分かってや」
頬杖をついて困ったように私を見つめる紫耀くん。
「好きやで」
「っ…」
「いつもそばにいられるわけやないし、嫌な思いさせてしまうこともたくさんあると思う。いつでも守ってあげるなんて、無責任なこと簡単に言えへん。でも、Aちゃんが傷ついた時はちゃんと俺が埋めるから。本気やから」
「………」
「もうさ、俺がアイドルだとか、ジャニーズだとか、そんなことは関係無しに。ただ単純に考えて?」
「俺のこと、嫌い?」
首をぶんぶんと横に振った。
次に聞かれる言葉は分かってた。
「じゃあ、好き?」
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ななな - 更新楽しみにしています! (2017年11月1日 21時) (レス) id: ba7bc7167b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優美 | 作成日時:2017年10月24日 1時