セカンド

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最悪だ。
プレイ内容なんて全く入ってこない。
むしろ、気持ち悪い。
浴びるように酒を飲んでしまったことから、酔いが回ってる。
なぜなら、見える位置に美容師3人組がいる。
愛しの藤ヶ谷さんは今は俺にとって害でしかない。
気分を暗くさせ絶望させる。
折角盛り上がりイイ感じの試合なのに。
もう、全然わからない。


「･･･ミツ、飲み過ぎ」
「んー」


クラクラする。座りたい。
周りの騒がしさも急に聞こえないぐらいにクラクラする。
でも、何とか強がりな自分が勝ち持ち堪えることができている。


「ごめん、トイレ行ってくる」
「ん。気をつけてね？」



横尾さんに断りを入れ、そのまま人混みを掻き分けて、トイレへと向かった。
皆試合に夢中なため、男子トイレは空いていた。
個室に入り、パンツも下げずそのまま便座に腰を下ろした。


藤ヶ谷さんとの思い出が蘇ってくる
その記憶のすべては美容院内だけど
全部店員と客だけど
その中にも優しさがありカッコ良さがあり惹かれていく要素がたくさんあって
初めて会ったお店の外での藤ヶ谷さんは普段履かないようなデニムを履いていて
ラフなのにキチッとしてて
カッコ良くて


でも隣には可愛い女の子がいて


自分が隣にいる妄想ばかりしていた。
その妄想は妄想でしかなくなり
現実では有り得ないこととなった。



二人並んだ姿はとてもお似合いだった
身長差、雰囲気すべてが。



『一緒にW杯見ましょうよ』


そう言ってくれたあの言葉は嘘だと知る。
彼女と見る予定だったくせに




やばい
気持ち悪い…


もう藤ヶ谷さんに逢いたくない
逢いたくない
美容院に行かなければ逢うことはない
逢えない



それでいいじゃないか
甘く抱いた恋心を失う。
恋を失うと書いて失恋


ただ、それだけ。


逢いたくない
逢いたい
逢いたくない
逢いたい


結局は逢いたいよ、藤ヶ谷さん


彼女がいてもいいから
二番目でもいいから


逢いたい
好きで・・・いたい。



酔いのせいか涙が溢れてくる。
気持ち悪いのを抑えその涙も溢れないように堪える。


手で顔を覆っていると、
聞こえてきた…トントンとノックをする音



「･･･すみません、入ってます」



他が空いてないのか？
とりあえず今出ることはできないため
そのまま断ると、
もう一度鳴るノック音



「･･･、横尾さん？」


その鳴り止まない音に横尾さんかと思い
そう口に出すと


「藤ヶ谷です。北山さん大丈夫ですか？」


藤ヶ谷さんの優しい声が聞こえてきた。

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