セカンド

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結局あのまま二回目を行い、横尾さんは帰っていった。彼女のいる場所へ。
彼女と同棲してる横尾さん。
俺の匂いをつけないように、自分の愛用している香水を振りかけて帰っていった。


横尾さんが帰った部屋でひとり今日のことを思い出す。
なんでW杯の話の時、藤ヶ谷さんに言わなかったんだろう。俺もその日行くんです！偶然〜とか。
俺も行ってもいいですか？とか。回りくどくても直球でも。何も言わずに当日、スポーツバーにいたらただの怖いやつだし、ストーカーだ。



「あー、やらかした」



服を纏っていない裸でタオルケットを羽織り、体操座りをし項垂れる。
藤ヶ谷さん･･･次の予約はまた１ヶ月後。
もうW杯も終わってしまっている。
それまで藤ヶ谷さんに逢えない



「どうするよ、自分」



逢いたいのに。



とりあえず明日のために
洗面所に歯磨きのために行くと鏡が目に入る。
藤ヶ谷さんに整えてもらった髪型は横尾さんのせいで乱れていた。
藤ヶ谷さんを思い出しながら整える。



『北山さんの髪はここから、前におろすように乾かすと綺麗に纏まります』
『え、こうですか？』
『ふふっ。はい。そうです』



ドライヤーを当てながらブラシを通す。
前髪は目にかからないように、顔周りも隠れないようにいつも綺麗に整えてくれる。


「横尾さんは襟足長い方が好きなんだー･･･」


今度は襟足は残してもらうようにしようかなとふと思った。


あー、抱かれたい。
藤ヶ谷さんに。あの腕に。


一緒にテレビを見て笑い合ったり･･･。


「ヤバい。ホント。好き過ぎてどうかなりそう」


いっそ、美容院行くことを諦め告白をしてしまおうか。
一夜限りでいいから、抱いてください、とか言ってしまおうか。



身体だけでもいい
愛してくれなくていいから
店長とお客以上の関係になりたい



どうしたら、好きになってくれますか？
どうしたら、抱いてくれますか？
彼女はいますか？
男性でも恋愛対象として見てくれますか？


聞きたいことはたくさんあるのに。
いつも聞くことは、あの番組見たとかどの雑誌の服がオススメか･･･知らなくてもいいようなことばかり。


生徒には、何でも疑問点があれば…悩まず聞くことと指導しているのに。
講師である自分が実行できていない。



聞いてしまえば、終わってしまう気がして。
藤ヶ谷さんと俺の関係は、俺が美容院に行かなくなれば終わる、ホントにただそれだけ、だから。

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