愛してるよ橙くん２

＊ ページ39

黄side





康二が目を覚ましたのは、次の日のことだった。


オフだったのは、俺と佐久間で。

相変わらず康二の手を握って、ただただ待つだけの時間が過ぎていって。




橙「………ん…」


「っ、……康二？」



ゆっくりと目は開けられ、その視線は目の前にいた俺に向けられた。



「康二……俺、わかる？」


橙「…っ……か…ぅ…く……ｹﾎｯ…」



言葉は聞き取りにくかったけど、確かに言った俺の名前。



「良かった…………ごめんな、すぐに助けてやれ
　なくて。気づいてやれなくて、ごめん。」



そう言ったけど、まだ意識がはっきりしない康二に伝わってるかはわからない。

これからが、頑張りどころ。



桃「康二がある程度落ち着いてから、な？」


「うん。」




日数が経つにつれて、少しずつ動けるようになってきた、康二。
タイミングをみて、話もできた。




橙「言わんくて、ごめんなさい。どうしたら
ええか、わからんかった…。もし皆に何か
　 あったらって思って、怖かった……
　 バレたらアカンって。怒鳴って、ごめん。」


「俺も、ごめん。勝手にイライラして突き放し
　て、傷つけた。もっと康二に寄り添わなきゃ
　いけなかったのに。怖かったよな、すぐに
　助けてやれなくて、ごめん。」


橙「…っ…」



下を向いて、首を振る康二。泣いてるのが、わかった。涙が溢れて、こぼれ落ちている。

それを拭おうと、手を伸ばしたけど、




橙「っ、だめっ…さわらんで！…」



出てきたのは、拒否の言葉で。



「……ごめん。」


橙「あっ…ちゃうっ……ひかっ…」


「………うん、教えて？」




今度はちゃんと、待つから。




橙「…ぉれっ…きた、な…からだっ…ぜん、ぶっ…」




たどたどしく紡がれたのは、自分の体が汚れてるということ。

康二の体にも頭にも、あの時の感覚が残っている、証拠。




「…触れたら、だめ？」


橙「…えっ」


「俺は、康二に触れたいよ。」


橙「…あかん…よ……よごれ、て…まう……」


「大丈夫。俺が温かい記憶に上書きする。
　ね、康二。触れさせて。」


橙「…やっ…きら、われるっ……きたない、て……」


「汚くないし、嫌わない。俺を信じて。
　康二……好きだよ。どんな康二だって好き。
　大丈夫だから、手、出してごらん？」


橙「…っ…こわ、いっ…」



必死に首を振って絞り出す、声。呼吸を乱しながら、自分の体を抱きしめて、震えてる。





康二……今度こそ、助けるよ。

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