青い夏 四章

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しばらく天井を見つめていると
ガラッと扉の開く音がした

そちらに視線を向けると
彼と目が合った

何も言わずにこちらに近付き
ベッドの上に腰掛ける


「しげ？」

彼を呼ぶと
ゆっくりと私に振り向く

その瞳は、少し潤んでいるようだった


「アホ、何してんねん」

彼は小さくそう言った

多分怒っている
でも、心配するようにかけてくれた言葉に
胸がぎゅーっと締め付けられた


「ごめん…」

そう謝ると
彼はそっと私の頭を撫でてくれた

久しぶりに感じる温もりは
私を安心させるには十分だった


起き上がろうと上体を起こすと
彼はそれを支えてくれる

そのまま、抱き寄せられた


「怖かったんやぞ」

いつか、私が階段から落ちそうになった時
彼は同じことを言った

その時と同じように震える彼は
やはり泣いているのだ


「ごめん」

謝ることしかできない私に
彼は何も言わず力強く、それでも優しく抱きしめてくれる


彼の温もりに触れ、安心したのか
気付けば頰に涙が伝っていた

縋り付き、彼の胸を濡らしていく


止まることを知らないそれは
いつまでも溢れ続けていた

こんなにも自制が効かないほど涙を流したのはいつぶりだろう

すぐに枯れてしまう涙も
今日に限ってなかなか引っ込んでくれない

それを止める術さえ忘れてしまった私は
ただ嗚咽を漏らしながら彼にしがみつく事しができなかった

背中をトントンと優しく撫でる彼の腕は
次第に呼吸を落ち着かせていく


「怖かったな」

その彼の言葉に小さく頷き
しばらく彼の腕の中に収まっていた


彼の温もりに
彼の香りに
全て委ねて


今はただ涙を流すことしかできなかった

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