内緒のキス、秘密の関係。～Kazunari.N～ (ページ15)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:388,116 hit

2人の世界ページ15

・

広いソファーの端と端

30センチ以上近づかない約束を

お互い、冗談半分で、本気で守っていた。

・

「好きなんじゃないの？煙草」

「….全く。歯磨き粉じゃん。」

「….(笑)なんで吸ってんの？」

・

この人は、遠回しってことが嫌いみたい

オブラートに包むとか、嫌いみたい

・

「発散」

「発散？ストレス？」

「さみしさ」

・

は？って顔をした、お酒にめっぽう強い二宮”先生”

・

「さみしくなると、吸いたくなるの」

「…..」

「理由分かんないけどね」

・

誰にも言ったことのない

心の奥の、底の、深い深い、闇みたいなところ

・

つまらなくて始めた援交も

親がいなくなったから始めた煙草も

・

エスカレートするに連れ

笑えなくなる自分がいた。

・

「梨田」

・

空になったコップを置いて、二宮先生が立ち上がる

・

「立って」

・

撫でるような声に、猫みたいに従った

・

それが、間違いだとか、正解だとか

誰も教えてくれなくていいと思う

・

「….っ！」

・

ふわって香ったお酒の匂いが

あたしが吸った事ない匂いの煙草が

身体中を包み込んだ。

・

「煙草吸いたくなったら、こうすればいいじゃん」

・

背中に沿うように降ろしていた濡れた髪の毛に

先生の手が触れる。

・

「….30センチ、」

「取り消し」

・

優しく包まれる腕の中は

なんか、異次元で、信じられなくて

いま起こっていることが、全部嘘みたいに見えた

・

「…..あんた、教師でしょ？」

「そう。だから

…...内緒だよ？」

・

くちびるに唇が触れた。

・

そうしてあたしは

今日会ったばかりの、二宮先生と

2人だけの、世界を作り始める

面白いように歯車が合って、面白いように回ったの

ただ….それだけなの。

・