2s web アンソロ (ページ13)

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「何か儚いね･･･」
海から上がり砂浜に立ち尽くし優しい顔なのに涙が溢れていた。どうした？て聞くと「何でもない」と言い張る。
「どうしたんだよ」
「なんで、ない･･･」
「何でもないようには見えないけど」
「本当、なんでも･･･ないから･･･」
身体を向き合わせ頬に伝わる涙を指で拭ってあげてもそれでも止まらない涙。泣いてる姿を見てそっと抱き締めると「ごめんね」て呟き俺の背中に腕を回したがその腕力から弱く感じた。
「大丈夫？」
「あの人との思い出が甦ったの」
「あの人て･･･」
「元彼」
「そ、そっか･･･」
そう呟くと俺の背中に回した腕が解き放たれた。俺は何で元彼の事思い出すんだろうと謎だった。だけど大切な恋だったんだろうな、て思うと怒りには届かなかった。むしろ未練があるように見えた。だけど俺にとって大切な恋だった。だけどそれはもう届かない。千賀にとって俺は誰の代わりでもよかった？そう告げようした時、千賀がこう呟いた。
「出会いが早ければ･･･」
「それ以上言わないで」
何となく察した。どうせ元彼の前に俺と会ってたらこんな悲しい恋はしなかったんだろう。海を眺めてるのにまた涙が溢れていた。泣いてる千賀を再び抱き締めると「ごめんね」と言葉を零れ落ちた。
「何も言わなくていい。それより俺の言うこと聞いて」
「何？」
「このままでいさせて」
胸辺りが濡れるぐらいまで泣いてて俺は何も出来ずただ抱きしめるだけ。欠月が満ちるまで抱きしめて時間を過ごした。これで千賀との思い出は終わった。