涙で光るガラス (ページ23)

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世界一嫌いな音で目が覚める。

目覚ましの音ってどうしてこんなに憎たらしいんだろう。

スマホのアラーム音を止めようと目を開けずに手を伸ばすと、サラサラな何かが触れる。

松倉「ふふっ、それは俺の頭ね」

眠過ぎてなかなか開かない目をゆっくりと開けると、海斗くんは笑いながら私の手を取って"スマホはこっち"とスマホを持たせてくれた。

…最悪。

今の私、お世辞でも可愛いとは言えないような顔だった。

松倉「おはよ」

『おはよう』

松倉「あれ、Aちゃんって朝弱い？」

どちらかと言えば弱いけど、私が不機嫌なのはそうじゃなくて、寝起きの顔を見られたからだよ。

「海斗くんいつ起きたの？」

松倉「んー、15分前くらい？」

最悪、最悪最悪。

どうしよう、寝てる間ヨダレ垂らしたりしてなかったかな。

自分から勢いで一緒に寝たいとか言ったくせに、今になって後悔してきた。

これ以上顔を見せたくなくて布団に潜る。

松倉「どした？」

毛布を控えめにペラっと捲ってきた海斗くんは、朝イチでも変わらずかっこいい。

悔しいな。

海斗くんの手から毛布の端を奪ってまた潜ると、今度は手が腰に回る。

松倉「まだ眠い？」

リズムよくポンポンしてくる手は寝起きだからかとっても温かい。

「…海斗くんに酷い顔見られた」

松倉「え？」

「元々可愛くないのに、寝起きの酷い顔見られた」

松倉「何言ってんの、ずっと可愛いよ」

「嘘」

松倉「ほんと」

アイドルだからこんなに甘い言葉を言うのも慣れてるのかな。

だとしたら確信犯だしズルすぎるよ。

海斗くんも同じように布団に潜ってきて、暗い中私の頭を少し持ち上げられると、そのまま腕枕をしてきて腰を引き寄せられる。

毛布はいつの間にか海斗くんに奪われていて、朝日がカーテンの隙間から射し込んで、部屋の中を明るく照らす。