涙で光るガラス (ページ19)

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松倉「ごめん。明日も仕事あるだろうし無理だよな」

『無理じゃないよ。ただ海斗くんが来るの大変かなって』

松倉「俺が会いたいからいいの」

『…わかった。私の家でもいいなら、何時頃になるか分かったら連絡して？』

松倉「ありがとう。今日1日頑張れそう」

『私も』

何も気にせずに会話をできる、一緒に同じ時間を過ごせることが、いつまでも続けばいいのに。

ふたりで海を歩いて、シーグラスを交換して

そんな日が、ずっと続いてほしいよ。

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今日は仕事が残業だった。

急いでスマホの通知を見たけど、海斗くんからのメッセージはなくて

…来るって言ってくれたこと、忘れちゃったかな。

私から連絡するのも、海斗くんのお仕事を知ってしまった以上立場的なことを考えると出来なくて、連絡を入れないまま帰ることにした。

今日、ご飯どうするかとか聞いてなかった。

海斗くんが来るまで待つ？

でも何時になるか分からないし

本当に来てくれるかも分からないし

色々考えてたらお腹は空かなくて、もう夜ご飯抜きでいいかな。

家に着いてからも連絡はなくて、シャワーを浴びてソファーに座って、前録画していた刑事ドラマを見た。

…でも、それが間違いだったのかな。

だって、刑事ドラマの主要人物との同居人として海斗くんがドラマに出ていたから。

初めて見る海斗くんの演技は、あまりにも真っ直ぐで胸が苦しくなる。

なんだか凄い人と出会ってしまったみたい。

海斗くんを知れば知るほど、どんどん遠く感じる。

色々考えていたら涙が溢れてきて、止めることが出来なくて

ドラマはいつの間にか終わっていて

タイミング悪く鳴るスマホの着信音。

…海斗くんだ。

松倉「もしもし？」

無視するのは違うと思って出たけど、泣いているから上手く話せないし

泣いていることなんてバレたくないし黙り込む。

松倉「もしもしAちゃん？」

"あれ、かけ間違えて…ないよな、うん"と電話越しに聞こえてくる海斗くんの声。

松倉「聞こえてる？」

何か話さなきゃ。

『もしもし』

松倉「あぁ良かった、聞こえてた」

『聞こえてるよ』

泣いているせいで少し言葉が途切れ途切れになるけど、海斗くんにはバレていないみたい。