15 ページ15
授業の終わりと同時に立ち上がり、一目散に教室を出た。
｢おっ、終わったか｣
いきなり扉が開き、少し驚いた重岡くんが目の前にいる。
ちょっと必死すぎたな、恥ずかしい。
｢ごめん、待たせちゃって｣
｢ふっ、ええよ、そんなに焦らんでも。
俺んとこの先生やる気ないからとっとと終わっただけやし｣
やっぱり笑われた。恥ずかしい。
さっきからずっと空回りばっかり。
平静を装わないと。
｢なんか急に誘ってもうたけど、ほんまに時間大丈夫やった？｣
｢うん、全然！大丈夫。帰っても1人でごはん食べるだけだし｣
｢小泉さん一人暮らしなん？｣
｢そうだよ、重岡くんも実家関西だしそうだよね？｣
｢うん、男の一人暮らしなんてめちゃくちゃやで、ほんま。
学校行って、バイトして、遊んでってそんなんばっかでまともに自炊とかしたことないし｣
｢私も毎日自分のためにご飯作る気になれないから、わかる｣
｢そしたら今日はうまいもん食お！せっかくやし！初食事記念！せやなぁ、景気づけでやっぱ焼肉か！｣
｢えっ！｣
初食事記念･･･って。
｢あ、あかんかった？｣
｢いや、そんなことないのっ！ただ･･･ふふっ
なんか重岡くんらしくて･･･ふふふっ
いいなって思った、あははははっ｣
｢なんやねん、ばかにしてるやろっ！｣
｢してないよっ！｣
｢絶対しとる！｣
｢してないって！｣
いつの間にか緊張は解けていた。
少し拗ねたような表情をする重岡くんが
かわいくて、ますます笑ってしまう。
彼と一緒にいると心の冷えていたところに
明かりがぽっと灯っていくようだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 191人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひろか | 作成日時：2019年10月28日 18時
