貴方と歩む夜の街 (ページ3)

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続き×2 ページ3

｢ごちそうさまでした。おいしかったです!｣
｢よかったよかった。ところで、今の時間なんだけれど...｣
携帯のロック画面を見せつける彼。現在の時刻は午前1時8分、いつもならばとっくに仕事が始まっている時間だ。
｢いちっ、どっ、どうしよう!早く仕事に行かないと｣
｢まあ落ち着きたまえ｣
ポンと私の肩に手を置き、再びソファへと座らせるドラルクさん。
｢なっ、落ち着けだなんてそんなっ、落ち着けませんよ!こんな｣
｢その仕事を続ける意味はあるのかい?｣
｢...へ｣
｢仕事。続ける意味、あるの?｣
顎に手をやり、私の肌をびしりと指差す彼。
｢触ってみたまえ、自分の顔。カサカサじゃないか、ちゃんと栄養は足りてるの?｣
｢あ...｣
足りている訳がない。朝は食べず、お昼はコンビニでパンとココアを。夜だっていつも余り物で済ませている上に、折角買ったオールインワンを塗る暇だってないというのに。
｢現に今日、道ばたで倒れてたでしょ?私がロナルドくんを呼ばなければ今頃はミイラになってたよ｣
｢え?いや、あれはドラルクさんだったんじゃ...｣
｢違う。他の吸血鬼に狙われていたのを私が助けたんだよ。...一割くらいは、ロナルドくんの力も借りたかな｣
...そうか。私のせいで、色んな人に迷惑をかけてしまっていたんだ。
私が、無理をしてしまったせいで...
｢...わかりました、辞めます｣
｢そうか、やっとわかってくれたかい!いやー、君が私以外の吸血鬼に仕えると知った時はそれはもう不快感で覆い尽くされたわけだけどね、これでもうあんし｣
｢私、メイドになりますっ!!｣
｢...え?｣

｢それでは｣
｢ちょっ、ちょちょっと待って!?｣
ぐいと私を引き寄せる彼に苛立ちが募る。何だ、折角仕事を辞める決心がついたというのに。
｢辞めるって、メイドを辞めるんじゃないの!?｣
｢え、何でですか?辞めるわけないじゃないですか凄い良くしてもらってるのに｣
｢でっ、でも人間が夜働くっていうのはちょっとしんどいんじゃ｣
｢そんなの今やってる仕事の方がよっぽどキツいですよ!朝ご飯食べる時間ないくらい出勤早いし、お昼休みだって短いからコンビニでパン食べるくらいしかできないんですよ!?｣

｢というわけでさよなら｣と事務所を出た私は館に事情を伝え今日は休みをとり、翌日。上司に辞表を叩きつけ無事吸血鬼に仕える道を歩むのだった。