続き ページ2
「ほら、できたよ」
「っ!ドラルクさっ...」
彼がお盆を片手にキッチンから出てきた瞬間、彼へ投げ掛けてやろうと思っていた罵倒の数々はすぐに脳みその隅へと追いやられた。
コトリとお盆を机に置いて、向かいのソファへ腰掛ける彼。お盆の上には、お味噌汁が入ったお椀が一つとおにぎりの二つ乗せられた細長いお皿、そしてお箸が乗せられていた。
途端にぐぐうっと大きな音を立てる自身のお腹、一発叩いてやりたいと思ったが、自由を奪われている以上そんな行為はできそうもない。
「やっつけで作ったモノだからねえ。あまり趣向を凝らすことは出来なかった」
しょげたように頭を落とす彼、だったが...
どこが?
と言いたくなるくらいには、今の私の目にはそれが酷く魅力的に思えた。
お味噌汁には均等に切られたふわふわの木綿豆腐と、彩りを飾る薄い人参、細長く形を整えられた玉葱が浮いていた。玉葱なんて切って大丈夫だったのだろうか、そういえばさっき一度大きな悲鳴が聞こえてきたような気がする。ちらと彼の表情を伺うと目が僅かに赤くなっていた、可哀想に...おにぎりの方にも視線を移す。
「具は片方の分しか用意出来なかった」
「それくらいのことで落ち込まなくて大丈夫ですから!」
「そうかい?その代わりといっちゃあ何だが、こっちのおむすびには塩を混ぜておいたよ!あとこの前取り寄せた海苔を巻いていて」
「わかりましたから、ありがとうございます...」
料理のこととなるとすぐうるさくなるんだから... 溜息を吐き、改めておにぎりへと視線を移す。
確かに具が入っていることにこしたことはないけれど、別に私はお米の味をそのまま楽しむことのできる塩にぎりも嫌いではない、寧ろ好きだ。素朴で。
背後に回り、麻縄を解くドラルクさん。
彼がソファに戻ったのを見計らってそっとおにぎりに手を伸ばすと、彼は無言で頷いて私の動向に注目する。それを了承ととった私は大きく口を開けておにぎりにかぶりついて...
「〜っ!うまあ...」
自然と感嘆の息が漏れ出る。それくらい今の私は手料理という人の温かみに飢えていた。
「それはなにより」
にこりと嬉しそうに微笑む彼に言葉も返さず、夢中でお味噌汁を啜る。抜群の塩気と出汁の柔らかさが体に沁みる...
お味噌汁を一口、おにぎりを一口。さらに一口かじって、次はお味噌汁を...と続け、ものの数分でお盆の上は空になった。
続き×2→←他人の手料理がこんなにも温かいなんて知りませんでした。
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作者名:夜凪亜蓮 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Chihiro0521/
作成日時:2024年3月28日 18時