司法に携わる彼らとの日常×2 (ページ45)

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「一応聞くけど、お礼って何がほしいの?」
「何が欲しいって···Aから貰えるならなんでも」
「なんでもって···何となくの希望くらいあるでしょ?どこそこのブランドの何が欲しい〜とか」
「ブランドとか興味ないからなあ」
首を傾げて、ゆらゆらとカップを揺らす彼。その焦点は何に向けられているのか、もしかしたら何も見えていないやもしれない。あれだけ飲んでいたんだから。
「ていうか」
「ていうか?」
「Aから貰えるものなら何でも嬉しい」
コップの水滴を吸うために彼が取り出したハンカチは、昔私が誕生日に贈ったプレゼント。何年も前に贈った物をまだ使っている事実を目の当たりにしてしまえば、なるほど。彼の言葉は紛れもない本心らしい。
「そんなに嬉しかった?」
「何が?」
「そのハンカチ貰ったとき」
「うん、嬉しかった。だからまだ使ってる」
「あんまり珍しいものでもないと思うけどなあ、商店街で五百円!いつでも買えるよ?」
「気付いてない振りするなよ。Aから貰ったから嬉しいんだ」
彼の発言に思わずギクリとする。弁護士である彼ならば、私の一瞬の動揺でさえも簡単に見抜いてしまうのだろうか。
「···ずっと、Aのことを見てきたんだよ」
ちらと彼の様子を伺う、特に変わったようなことはない。ただ、彼の焦点がほんの少し···本当は、ずっと私に合わされていたのではないかと錯覚してしまう。
顔が熱くなってきた、私も気づいていないだけで随分酔っているのかもしれない。
「私のこと、好きなの?」
「直接言うなよ、無粋だなあ···」
「だって」
「好きだよ。Aの弁護を引き受けたのだって、半分はそれが理由だ」
「そうなの!?」
「だから、凄い不謹慎ではあるんだけど···ようやくチャンスが回ってきたって思ってた」
彼の発言に言葉が出なくなる。私の人生がかかっていた裁判をそんな軟派な下心ありきでのぞんでいたのかという呆れと···凄く、思われていたんだなあという嬉しさが一割程度。
「かっこよかったよ」
「そ、そう?それなら良かった」
「うん。見直しちゃった」
「···」
付き合ってくださいと勢いで頭を下げた彼には、またかっこいいところ見せてくれたらねと意地悪に返しておいた。