司法に携わる彼らとの日常×2 (ページ15)

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続きページ15

...だが、もし。彼女が本当に葉桜院あやめではなかったとして。では、一体誰なのか?そういえば私は、元々葉桜院にはオカルト雑誌の取材で来ていたのだった。
...背筋に、何か薄ら寒いものが走る。
彼女が葉桜院あやめでないとするのならば、その正体は...
Aは、毘忌尼や他の宿泊客がいない隙を見計らって、愛すべき恋人を呼び出した。

｢Aちゃんから呼び出してくださるだなんて...私、嬉しいです。今日は何の用ですの?｣
この言葉だってそう。今までの彼女は会いに行くだけでも嬉しそうにくすくす笑い、何を言うわけでもなく傍にいるだけでその空間は成立していた。だが、彼女は口だけ。言葉に本心が見当たらない。本当に嬉しいというのならば、何の用かなんて聞くはずがないのに。
...さらに疑心は募る。
｢ねえ｣
意を決したように、Aは彼女に問いかけた。
｢本当に、あやめちゃんなんだよね...?｣
少しの沈黙...と
｢...ぷっ｣
口元に手をやり、吹き出す彼女。
｢何を言ってるんですの、Aちゃん?私は葉桜院あやめ。決まっているではありませんか｣
彼女の笑い声を聞いて、途端に体の力が抜けていくA。
自分でも呆れてしまうほどのバカげた質問、当たり前だ。彼女は葉桜院あやめ、そうに決まっている。
｢そっか...そうだよね、あやめちゃんなんだよね...!よかった、本当に...｣
｢えっと...Aちゃんが何を考えてたのかはわかりませんが、水くみを任されていたのを思い出しました。私はこれで失礼しますね｣
ぺこりと一礼し、その場を立ち去る彼女。
その後ろ姿を見送った後、Aは自室にて原稿用紙とペンを取り出した。

｢ほんっとーにバカな女｣
彼女は、Aから受け取った手編みのセーターを机の上に広げる。
｢まさかあやめと入れ替わったことを勘づかれるとは思わなかったけど、まあいいわ。結果的に疑いも晴れたし｣
懐から一本のマッチを取り出すとすぐに着火し、セーターへと火を近づける。
｢私があんな目にあったっていうのに、あやめだけが幸せを掴むだなんて許せない｣
引火した火はやがて大きな炎へと成長し、セーターを黒焦げの糸くずへと変えていく。
｢さて、どうやってあの女とあやめの関係を引き裂いてやろうかしら。Aに散々暴力を振るった後、あやめと入れ替わる?それとも、いっそあの女を殺した犯人に仕立て上げてやろうかしら｣
うきうきと計画を立てる彼女は、黒くなった糸くずを押し入れに放り投げた。