7話 ページ7
タツヤくんは、いつ帰るん？
それは神社の参拝の帰りに訊かれた質問だった。勝った褒美にと近くの茶屋でみたらし団子を奢られてしまい、もう買ったものだからと差し出されれば突き返す訳にもいかずちゃんと食したが。これはその時に訊ねられたのだ。
そこまで長居するつもりはないが、一週間丸々抜けるのもあまりよろしくはない。となればそ四、五日ほどが丁度良い頃合いだろうか。
電車と雨でめくるめく過ぎ去っていった一日目。参拝してお団子を食べて、縁側でくつろいで終わった二日目。何も決めていない今日が三日目。明日が四日目。……何もしていないのにもう、明日には帰るだなんて癪だ。ならば帰路に着くのは明後日の五日目にして、今日と明日をちゃんと謳歌してみようか。
「Aちゃん、質問なんだけど今時間あるかな」
「どないしたんー？私はいつでも暇やよ」
「や、大したことじゃないんだ。この町を楽しみたいなと」
「それやったらお散歩しよーや！いっぱい連れていきたいとこあるんよ！」
「本当？是非連れていってほしいな」
「うん、準備するけちょい待っとってな」
ぺたぺたぺた。裸足の彼女と木造の廊下が鳴らす音。そういえば、木の床と畳で構成されたこの家は裸足で歩くのが一番気持ちいいのだと先日彼女は呟いていた。木造の床が果たしてフローリングとどう違うのかは生憎よくわからないが、それよりも遥かに暖かみがあることは俺にも理解できていた。
縁側に腰を掛けて足を揺らす。ゆらゆら、普段はサッカーばかりに使われている足が丸二日間以上もボールに触れていないなんて不思議な気分だ。少しの間の後、服を着替えた彼女が二人分のサンダルを手にして寄ってきた。手伝うから言ってくれないかと問えば、手伝われるから言わへんのやよだなんて返される。こんな状態ではお世話係みたいになってしまいそうである。
「Aちゃん、俺一人でも出来るからね」
「いつもは貴公子さんなんやから、こんな時くらい馬鹿になって任せちゃってええんよー？」
「世話の焼きすぎは俺が怠けちゃうから程々にね……」
「えへへ、はあい。面倒やしこっちから行っちゃおっか」
ぴょんと縁側を飛び降りて、彼女はにこにこ笑顔で歩き出す。あっちの畑がきゅうり、その隣がオクラ、その奥がトマトで＿＿それぞれの畑を覚えているのか特徴で見分けているのかは不明だが、楽しげに指をさす彼女は本当にここが好きなのだと感じさせる。そんな姿はとても綺麗で、あまりにも目に眩しくて。
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漣(プロフ) - 描きピーさん» 描きピーちゃんコメントありがとう〜！私にとっての「夏」という世界観を最大限綴れるように頑張ります……！ (2019年8月25日 22時) (
レス) id: 0a5e6cfb08 (このIDを非表示/違反報告)
描きピー(プロフ) - 漣ちゃん、新作おめでとうございます!漣ちゃんの執筆する「夏」をテーマにした物語は、綺麗な言葉と表現が巧みに使われていて読者の気持ちを涼ませてくれる所が凄く好きです!これからも応援しております! (2019年8月25日 21時) (レス) id: fe17964061 (このIDを非表示/違反報告)
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