Foever Bad Halloween【浦島坂田船】 (ページ2)

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「お嬢様ッ！お逃げ下さいッ！」

執事やメイドが叫ぶ中、私は訳も分からずにひたすら走って逃げる。何から逃げるのかも分からず、ただ走る。
屋敷の中はハロウィーンを祝う筈だった装飾で輝いており、オレンジ、紫、黒と言ったダークでファンタジーなテイストになっていた。

この状況がただ事でないことだけは分かっていたが、何が起こっているのかだけは詳しく分からない。
あちらこちらから悲鳴が上がり、屋敷全体が恐怖に包まれて行くのが感じられる。

「ニーナ、ミッシェル……ジャックにアレン！どこ！？どこなの！？」

いつも私のお世話をしてくれていた四人ですら見つからない。常に私と行動を共にし、寝食のその時ですらも私の身を思って一緒にいてくれた四人ですらも見当たらない。

どこ？みんなどこ？どこにいるの？

電気が点いていない部屋もあれば、照明すらも壊されてしまった部屋もある。
両親は？両親はどこにいる？

別の部屋から聞えて来る悲鳴を背にして、両親の寝室へ足を運ぶ。
私が居る所の近くからは悲鳴は聞こえないし、特別な騒ぎが起こってはいなかった。

「誰か！誰か居ないの！？パパ！ママ！！」

返事が返って来る訳も無く、ただ虚しい悲鳴が聞こえてくるだけ。

この屋敷は広い。使用人として二十数人を雇っているぐらいだから、それはもう普通の家庭のものでは無かった。屋敷と名が付くぐらいだから、自室から他の部屋へ移動することですら距離がある。

訳も分からぬまま、混乱した頭でいつもの両親の寝る寝室まで辿り着く。いつも通りのその道はやけに長く感じられた。

ノックをしようとするも扉は開かれており、中は真っ暗で様子は伺えなかった。

「パパ、ママ？」

返事が返って来ないのを不安に思うが、それでも新室内へと足を踏み入れる。
ぴちゃ、ぴちゃ、と靴が何らかの水音を鳴らす。

ぴちゃ、びちゃ、ぴちゃぴちゃ。

「で、電気…」

壁を伝い、電気が灯くようにスイッチを押した。

「あ、あ、あぁ…アあぁぁァぁああ、」

私が踏んでいた水音の正体は真っ赤なソレで。
両親から出ているものであって。

「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ！！！」

ハロウィーン当日。
私の両親は何者かによって殺害され、永遠に帰らぬ人となった。