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部屋の両親に触れても、両親は人としての温もりを持っていなかった。
すっかり冷たく、肌も青白くなってしまっており、瞳孔も開いたまま固まってしまっている。変わり果てたその姿に私は何もすることが出来なかった。
「ぁ、んで、ねぇ?」
まともに発生することができずに、掠れた声しか出てこない。
やがて、屋敷に響いていた悲鳴も聞こえなくなり、何の音もしなくなる。うるさい程の絶叫に包まれていた中での静寂はやけに不気味に感じられる。
だが、その静けさを打ち破るかのような複数の足音が私の耳に届き、その恐怖に萎縮する。
私も両親や使用人達と同じ目に遭ってしまうかもしれない。両親のように惨い殺され方をするかもしれない。
そう思うと身体は自然に動き、廊下から死角になっているベッドの影に隠れていた。
恐怖と焦りのあまり涙が溢れる。足音はコツ、コツ、コツ、と歩くばかりで、私の恐怖をわざと増幅させているかのようにも思えてくる。
一秒一秒がやけに長く感じられ、私にとってその一秒は命を左右する大切な一秒だった。
相手は複数人居るために、十七歳の子供ぐらい簡単に捻じ伏せられる。
今すぐにでも警察を呼ぶべきかもしれないが、もし、私が死んでしまったらオリヴィア家一族の血筋が絶たれてしまう。家族が襲われてしまったことの詳細を話せる人物がいなくなってしまう。
オリヴィア家の一人娘として、現跡取りとしての使命感だけが今の頼りだった。
───コツ、コツ………コツ……………
やがて、足音も通り過ぎ、玄関口の扉が開く音がした。
私は少しの安堵感にホッと胸を撫で下ろすが、今までの恐怖感と家族の悲惨な状態に眩暈がして、胃液がせり上がってくる。
うっ、と声が漏れると同時に、べしゃべしゃと胃液を吐き出してしまう。
血液と混ざり合うその光景ですらも気持ち悪くて目を逸らす。
胃の中が空っぽになってしまえば、虚無感と疲労感が一気に押し寄せ、ふらふらと屋敷内を歩き回る。
今日の朝、庭の手入れをしていた
死んでしまっていた。
何故か私の身の回りの世話をしてくれる四人は見つからなかったが、どこかへ逃げていることだろう。
屋敷中はハロウィーンの装飾とゴロゴロと転がる死体でアンバランスで、狂気染みた空間になっていた。
どこか冷静になってしまっている自分の感情が分からずに、フラリ、フラリ、と玄関口に向かって歩いていた。
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鎖座波(プロフ) - れいさん» 嬉しいです!それあるあるですね笑笑 (2020年11月23日 0時) (レス) id: a183fb70e9 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - ねこまる先生。さん» アッ嬉しいです(涙) (2020年11月23日 0時) (レス) id: a183fb70e9 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - これ私評価したっけ、、、ポチッ[既に投票済みです(無効)] (・ω・) (2020年11月4日 8時) (レス) id: 6b7b145b17 (このIDを非表示/違反報告)
ねこまる先生。 - アッ好きです…(震え) (2020年11月3日 21時) (レス) id: 1f53132dc8 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - トーストぱんさん» ぱんちゃん(;_;)ゾクゾクしてくれて何よりです!!感想ありがとう!! (2020年10月31日 13時) (レス) id: a183fb70e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鎖座波 | 作者ホームページ:Greedy girl
作成日時:2020年10月30日 4時