ぱぱのむすめがいい【桃】

story64 ページ25

さとみside

つぐみが、俺のもとからいなくなって3日がたった

半年ぶりに、俺とひなだけ

俺の人生において、たった半年いただけなのに癖というものは恐ろしい


朝、トーストを二枚焼いてしまう

朝食の準備を終えて、寝室につぐみを起こしにいってしまう

洗濯物が少ないことに違和感を覚える

家の中につぐみがいないと、探し回ってしまう

どこにもいないのに


一度、つぐみは俺を驚かせようと、風呂場に隠れていたことがあった

あの時はなかなか見つけられなくて俺はかなり焦った


あの時みたいに、どこからともなく現れてくれるんじゃないかと

思ってしまう


家に残るつぐみの痕跡を片付けられずにいる

服、ぬいぐるみ、食器類

どれもこれも、一人になった俺には不要なもの

でも、捨ててしまえば

もう、つぐみはいなかったことになるような気がして怖い


ふと、ベットの上に置かれたぬいぐるみを見て違和感を覚える

最初に俺と会ったときに持っていた、色あせた兎のぬいぐるみ

はなちゃんに買ってもらったからと、つぐみが一番大切にしていた


つぐみが、あれを置いていくか？

つぐみが持っている、唯一のはなちゃんの痕跡

あの日、つぐみが持っていった兎のぬいぐるみは俺が買ってあげたもの

新しいのを買ってからは、古い方の兎は持ち歩かなくなっていた

落としてしまうのが怖いからと


だとしても、つぐみがこれを取りに来ないのはおかしい

だって、あのまま九条さんのもとで暮らすということは

つぐみにとって母親を思い出せるものがなにもないということだ


あれは、つぐみの本心じゃない

いや、そもそもつぐみがそう言ったのかさえ怪しい

でも、九条さんはあんなことを言わせたり、くだらない嘘を付くタイプではない


なら…あの秘書か？

なぜ？


今思えばあの秘書は、最初から半ば強引につぐみのことを取り戻そうとしていた

あの秘書にとって、つぐみがいないことが不利益だとしたら？


疑いだしたらキリがない

でも…どうしても、つぐみがあんな、非合理的なことをするようには思えない



頼むから、もう一回パパと会ってくれ






＿＿＿二人が再会するまで、あと2日＿＿＿＿

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