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第二節 ページ8

「おーい、ダザイくーん!」

「ん、オダサク?」

22時。足早に司書室へと向かう俺の背中に、遠くから呼びかけるような声を受け取った。その声の主は、2本のアホ毛と、前に流した三つ編みが特徴的な、織田作之助というP.N.の作家であった。生前は、同じ派閥として酒を飲み交わしたこともあるほど仲は良かった。無論、今も仲は健全である。
オダサクは、長い上着(というよりは、腰に巻き付けられた布?)をはためかせながら、此方に駆け寄ってきた。

「やあっと見つけたわァ。ダザイくん、どしたん?今日、無頼派みんなで飲む、って約束、しとったやろ、なのに来うへんから、ワシがわざわざ探してたんよ」

「あ、あー……そ、そういえば、そうだったな」

しまった、すっかり忘れていた。確かに2日前ぐらいに、無頼派のみんなで集まって飲もうぜ、という話があった。先程の食堂での出来事が些か衝撃的だったから、頭から抜け落ちてしまっていた。そういえばってなんやねん、忘れとったんか、という突っ込むような声が、不思議と遠くから聞こえた。
うん、どうしようかなこれ……いやでも飲むのは遅刻しても大丈夫な感じあるし、逆に司書の所に行かなかったらまずい気がする……よし、これは司書とのデートを取るか!

「ごっめ〜んオダサク、俺急用出来ちゃってさァ〜!だから、遅れちゃうわ!言うの忘れててごめんな〜?」

俺はオダサクに向かって、両手を合わせ、とおっても申し訳なさそうにしながら言った。オダサクは、そんな俺を見て、いやそうに目を細める。

「ウッザ……急用ってなんや、また女の子引っかけるん?今どきどの子も、ダザイくんのことなんて興味無いと思うで?」

「ちげーよ! 」

俺はつい大声を上げるが、オダサクはそれに怯むことなく、逆に、俺の反応を楽しむように見ていた。だが、今は構っている時間も無い。

「悪いが、俺は司書とデートなんでな!さらば!」

そう言うと、オダサクはありえないものでも見たかのように、大きく目を見開いた。そんな様子を横目に見ながら、俺は走り出す。あのお司書はんとって、どういうこと、ちょっとダザイくん、なんて声が背中から聞こえた。

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作者名:べーこんむしゃむしゃくん | 作成日時:2022年11月22日 13時

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