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ユンギさんはスッと向かいの席に座ると、
「元気、そうだな。
それ、そん時さ、俺居合わせたんだよ。」
紙袋を指差してそう言って、ぽつりぽつりと
記憶を辿るように話してくれた。
「今年の始めだった。この店に初めて来たのは。
無表情の店員がいてさ、それが逆に印象に残っ
たんだろうな。
そんで通うようになって少しした頃、
その日もその店員からコーヒーを受け取って、
そしたら後ろから悲鳴が聞こえてさ、
女の人が具合悪くなってたのをその店員が
介抱してた。」
ユンギさんは随分と前からわたしを知っていたんだ。
「スタジオが目の前だからさ、
その店員をよく見かけんだよ。
その度、人助けしててさ。
だからさ、お前にバス停で声かけた。
ずっと前から知ってたんだよ。
無表情だけど、誰より人間くさいお前をな。」
あのバス停で突然声を掛けられたとき、わたしは店によく来るお客様だと認識していたけれど、ユンギさんがわたしを認識しているとは思いもしなかった。
『無愛想な接客しかできないのに、
困っている人が居ると何かしなくちゃって...
おかしなやつだと思いましたよね？
全部... 偽善、なのかもしれないです。』
微力でも人の役に立てれば、
自分の存在に意味があるような気がしたから。
そうやって何かを保ってきたのかもしれない。
「偽善か...
それ。読んでみたら？」
ユンギさんはまた紙袋を指差して、何かとよく見てみるとそこには封筒が入れられていた。
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作者名：sayu_ | 作成日時：2021年10月12日 3時
