：60 _JK ページ20
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「はい。どうぞ？ 」
「... 」
「ジョングクっ、来てくれたのね。
また背が伸びて、顔付きも男らしくなった
みたい。」
病室のドアを叩くと、力無い声が聞こえた。
なんだよこれ...
" 嘘 " であるはずだった。
つい2、3日前まで、
そんな嘘をついてまで気を引きたいのかと、
ヌナにしたことを反省して詫びろと、
それができないのならあんたを捨てると。
そう言ってやろうと、シナリオが出来上がっていたのに。
元々細い人ではあった。
だけどそれどころじゃない。
誰が見たって、一目で重病人だとわかるほどに
窶れている。
「どうしたんだよ... なんでっ... そんな... 」
「ふふっ。ちょっとね。
だけどジョングクの顔見たら、随分気分が
良くなったわ。」
言葉も威勢も、失った。
目の前のその姿があまりにも弱々しくて。
「ねえ、あの子に... 会えたの？」
父さんは言っていた。
母さんは、
俺がなんであの大学を選んだのか知ってたと。
「あの子は貴方を受け入れてくれた？」
「っ... うん。ヌナは優しいからっ。」
俺が泣きながら母さんのせいだと責めた日のことを忘れてなんていなかった。
ずっとヌナしてしまったことを悔やんでいた。
ヌナのお母さんを知ったときから、二人が重なって見えるようになった。
その瞬間、いちばん辛かった時期に引き戻されてしまってどうしようもなかったんだと。
「そう、よかった。
じゃあ、ジョングクは今、幸せなのね。」
なんで、そんなふうに笑うんだ。
真っ青なクセに...
笑う気力なんてどこにもなさそうなのに。
自分のことみたいに幸せそうに。
「ヌナは、母さんが大好きだったんだよ？
母さんもそうだったじゃん。
なのにっ... なんでっ... 」
みんなで昔みたいに笑っていたかった。
「さっき男らしくなったって言ったばかりなのに
大きくなっても泣き虫ね。
弱い母親でごめんね... 。
だけど、ジョングクの幸せを願ってるわ。」
母さん。
もう誰も母さんを傷つけたりしないよ？
ましてや、ヌナは
俺が出会った人の中でいちばん優しい人だよ。
俺がこんなに好きで仕方ない人なんだ。
「なんだかすこし眠くなってきたわ。
ふふ。いい夢が見られそう。」
そっと触れなければ折れてしまいそうな手を
自分の手と重ねた。
「おやすみ、母さん。」
涙を止めることができなかった。
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作者名：sayu_ | 作成日時：2021年10月12日 3時
