ガラスの靴で息絶えて【夏JW】 (ページ13)

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「…あ、あり、がと」
「あ、いや、大したことしてません」

型にはまったように合っていた目は呆気なく逸らされ、自信なさげに小瀧くんが俯く。彼の顔を包んでいた手を離せば、すかさず抱きしめられた。

「小瀧、くん」
「俺ほんまに…先輩がいないとダメです」
「それは、知ってるよ」

小瀧くんの感情の起伏が激しくて不安定なことも、頼れる先輩が私くらいしかいないことも。

「…先輩、いいこと思いつきました」
「なに？」

抱かれた肩に触れていた手が離れると、小瀧くんが笑った。

「絵に、ガラスを使うんです」

数学の授業に頭を悩ませる余裕がないほど、私の鼓動は早まっていた。

小瀧くんの笑みが狂気的なものにしか見えなくて、急いで彼を振り払って教室に戻ってきたのだ。クラスメイトの冷ややかな目線なんて気に止める余裕がないほど、全身の震えが収まらなかった。

きっと空き教室のガラスを割った人が、私にガラスの靴を送った人に違いない。そしてそれは、きっと重岡くん。

そんな彼と同じようなことをしようだなんて、小瀧くんは何を考えてるんだ。

それからの授業も耳には入らなくて、流星が何回かこちらを気にかけてくれていたのは何となく分かっていたけれど、知らないフリをした。

もういいこと悪いこと関係なく、全てのことに目をつぶっていたい。そんな私の願望は──。

「A、行こうや」

呆気なく砕け散る。

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