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どうやら小瀧くんが素材から集めて作ったものらしい。これで完成ではなく、これからカボチャの馬車にするのだそう。
「小瀧くん、やっぱり乙女なんだね」
「そうなんすよ。でもシンデレラなら、魔法使いがいいっすね」
王子様とかなれる器じゃないんでと自嘲気味に笑う小瀧くん。
「A〜」
桐山先生の声が廊下に響き渡る。多分、教室にも保健室にもいないということを聞きつけて、探しに来たのだろう。
「あ。私、行かなきゃ…」
「待って」
一歩踏み出したところ、小瀧くんに腕を掴まれた。次の瞬間、カーテンで巻かれて、廊下側から見えないようにして。
「あれ、小瀧やん」
「あ、先生。お疲れ様っす」
「お疲れ様っす、ちゃうねん。授業戻れや〜」
もう少しここで休ませてくださいよとか、軽い夏バテですとか、桐山先生にあれこれと言い訳をして何とか躱そうとしている。
もしかして、私を庇おうとしてくれているのかな。カーテンで遮られているけれど、多分私の目の前に立っているのだろうし。
「単位落としても知らんで〜」
「あざーす」
「いや早く戻ってな!?」
「分かってますよ」
桐山先生の足音が遠ざかると、小瀧くんが静かにカーテンを開けた。真っ白な世界から彼が現れたのは、まるでベールを捲られたような気分だった。
目が合う。目線が絡む。熱っぽい彼の瞳が近づいてくるから、思わず彼の顔を抑えた。
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作者名:ぴの山 | 作成日時:2021年8月8日 15時