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ut視点
Aちゃんが何か隠しとるのは薄々感じ取った。
最初に入院が決まった時、病名を聞いても教えてくれんかった。
今でも病名は何一つ教えてくれへんし、ずっと抗生剤を点滴してるのも嘘やった。
Aちゃん、薬の名前をネットで調べたらどんな薬なんか分かるんやで。抗生剤じゃなくて、抗がん剤やったって事。
薬の副作用で髪が抜け始めてきて、帽子を被り始めたので確信した。
Aちゃんは綺麗な黒髪を大切に手入れしていたから。
僕はAちゃんの髪が大好きやった。
髪だけじゃなくてAちゃんの事が僕は大好きや、最初はAちゃんの気を引きたくて始めた女遊びもAちゃんが入院してからは止めた。
日に日に弱ってるAちゃんは、今ではベッドに寝たきりで沢山の管に繋がれている。
デイルームでシッマと3人で談笑していたあの頃の面影はほとんど無い。
ut「そろそろ何の病気か僕に教えてくれへん？日に日に弱っていってるAちゃんを見てると僕、辛いんや」
「実はさ、末期ガンなんだ…私…」
Aちゃんが言いづらそう答えてくれる。
癌は予想してたけど、まさか末期やとは思わんかった。
ut「もっとはよ言ってくれれば良かったのに…！」
「ごめん、ずっと隠してて。鬱くんには…心配掛けたく…なかったんだ」
ut「Aちゃん、僕ってそんなに頼りない…？」
「そんな…事ないよ…！…私が頼れるのは…鬱くんだけだよ…」
僕は思わず顔を伏せてしまう、もう涙でぐちゃぐちゃや。
「私ね…余命のタイムリミットが…今日なんだ…」
Aちゃんのその言葉に顔を上げた。
涙で顔はぐちゃぐちゃやけど、そんなん気にしてられん。
ut「え、嘘やろ…？」
「ほんと…だよ」
Aちゃんが嘘を吐いてるようには思えんかったけど、信じたくなかった。
ut「まだ諦めたらあかん、僕はAちゃんに言いたい事があるねん！」
「わたし…うつくんが…幼馴染でよかった…」
ut「Aちゃん！！！！！」
軽く身体を揺すると、Aちゃんの目の焦点が合わんくなってきて、慌ててナースコールを押した。
「女遊びは…ほどほどにね…。バイバイ…うつ…く…ん…」
Aちゃんは、それっきり動かなくなってしもた。
ut「Aちゃん、…大好きやで」
静かにそう呟くと、二度と返事は返ってこないAちゃんの唇にキスを落とした。
そして今日、僕は最愛の人を失った。
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