Carpe diem 6 ページ49
「それで...あれ、もう1時間経ったんだ」
シシィの呟きに、スペンサーは窓の方を見る。雲間から差し込む濃淡の陽光は、雨雫をまとった建物を照らしていた。
「え?あ、本当だ」
「さて、僕はお片付けをしようかな...」
「俺、そろそろ帰ります。雨宿りさせてくれてありがとうございます。楽しかったです」
スペンサーは立ち上がり、シシィに礼を言った。
「いいよ、僕も楽しかった。あ、見てごらん」
指差す先は虹だった。見るのは久し振りで、最後に見たのはいつだったのだろうと、スペンサーは感動の息を漏らした。写真に撮って送った。彼女も見ているだろうか。それともまだ気付いていないのだろうか。それでも構わない。綺麗なものを見て心が動かない人はとんといないのだから。
「あ、メール。『凄く綺麗。こっちも、学校の窓から虹見えるよ』」
スペンサーはすぐに返した。短く、雨宿り兼お茶会をしたと他の友人や家族より先に報告した。
「虹を見たら良い事があるって、母は良く言っていたなぁ。今日だけじゃなく、明日も良い事があると良いね」
シシィの優しい言葉にスペンサーは微笑んだ。すると、シシィは丁寧に箱詰めしたクッキーを持ってきた。
「どうぞ、君のご家族とお友達の分だよ」
「え、いいんですか?」
シシィは頷いた。
「僕からのお礼だよ。仲良く食べてね」
スペンサーは、シシィのプレゼントを受け取った。
「ありがとうございます!」
「いいんだよ、今日は本当に楽しかったから。またいつか会えたら、お茶しようね」
「はい!」
外に出ると雨雲は遠くへ歩いていて、薄雲から差す薄日が雨上がりのアスファルトを照らしていた。
「お邪魔しました、本当にありがとうございました!」
スペンサーは手を振って、シシィに別れの挨拶をして道を蹴って走った。シシィも「気を付けて帰るんだよ」と言って、手を振り返したのだった。
「さてと、お片付けしよう」
片付けの途中で、スマホが鳴った。メールで相手はイレックスとヘデラだった。内容はどちらも「これから帰る」とあった。虹の写真を載せて。それを読んで、シシィは笑った。
今日の夕食で、この出来事を話そう。少年もこの日を友人や家族だけでなく、想い人にも話すだろう。その楽しいひと時の思い出が伝わって、皆を笑顔にさせるだろう。
END
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ルツ・ヒューイット(プロフ) - ぼうきれ/新藤緋色さん» 最後までお読み下さり、ありがとうございます(^^)オムライスの質問、こちらもご返答ありがとうございます^^ (2021年6月27日 18時) (レス) id: d8efa9f421 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - 面白かったです! ちなみにオムライスは後者が好きです (2021年6月27日 18時) (レス) id: 9dfed805b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - 久し振りのドレミファソラル様とのコラボ話、連載スタートです!推敲しながら進めるので、やや更新頻度が遅くなるかもしれませんのでご了承下さい(土下座)。ドレミファソラル様のオリキャラ、スペンサー・ホームズ君と私のオリキャラ、シシィ出演のほのぼの短編です。 (2021年6月14日 8時) (レス) id: d8efa9f421 (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - ぼうきれ/新藤緋色さん» ありがとうございます!^ ^嬉しいです (2021年6月6日 6時) (レス) id: d8efa9f421 (このIDを非表示/違反報告)
ぼうきれ/新藤緋色(プロフ) - 面白かったです! 四神ってやっぱかっこいいですね……ルツ様の発想力がとても羨ましく、また憧れます! (2021年6月6日 6時) (レス) id: 873895aabe (このIDを非表示/違反報告)
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