オリキャラ短編集 17

少女と幽霊達の膝栗毛 23 ページ24

メディコ「今日も麗かねぇ」

15歳の現在のメディコは、渡し守として働いて5年。新しい養護施設の良環境のおかげか、飄々としながらも年頃の少女らしい淑やかさと朗らかさがにじみ出るようになった。以前のような無邪気な残酷さは影を潜めた。それでもふと現れる事もあるが。死を迎えた亡霊は縋るように蘇生を訴える。漕ぎながらメディコは澄ますように返答する。

メディコ「忙しいから無理。これからもずっとね」

川辺を下りながら悪霊に挨拶する。

メディコ「ご機嫌よう、今日も殺気立ってて」

しばらくすると役人にも会釈した。

メディコ「あら、お勤めご苦労様です」

オットーが管理するコミュニティは、ここ数年で人事異動に似たものがあったり、新参者登場など賑やかになった。

メディコ「ちょっと前のハロウィンにね。生者が冥府に迷い込んだのよ。すぐ戻ったけれど。その日、ラピドゥス夫妻は消滅の刑に処されたわ。余りにもお互いや娘さんを憎んでいたから。その娘さんの名前は、シュネルだったかしら」

メディコは話を続ける。

メディコ「次にね、ウッド夫人が役人に昇格したわ。悪霊じゃなくなった。心から反省していたから。息子さんとも和解したみたい。息子さんの名前?パーシアスよ」

次にね、とメディコ。

メディコ「私、初めて童話を読んだのよ。5年前に。ヴィルヘルム・ヨハン・エアハルトの作品、全部読み切ったわ。私ね、そのお父さんが好きなの。厳しいって皆から嫌われているけれど。今は、沢山の仕事を受け持っていっぱい働いているの。そういえば『来世で同じ過ちを繰り返したくない』って言って、来世取消しを直談判していたっけ」

滑るように舟は進んでいく。

メディコ「ルサールカ・ハドソンって言うセクシーな美女には気を付けてね。マフィアのボスなのよ。実は現世に夫と子供がいるわ。もしかしたら守護霊になるかもね。純粋に2人を愛しているから。最後に、彼女を5年前蘇らさせたのは、私なのよ」

勝手に話して終わったメディコは、岸辺に舟を近づけさせた。

メディコ「さ、到着したわ。裁判官様の所へ行ってご挨拶してね」

メディコは今日の仕事が終わると、黒いローブを脱いだ。これから現世に戻るのだ。

メディコ「5年前の膝栗毛、またやりたいなぁ」

明日のあの世はどんな風になるのか楽しみだ。


END

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