オリキャラ短編集 14 (ページ29)

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業火 14 ページ29

レラ「ヴェレーノ‼」

「捕らえろ!」

数名が後を追う。

ゲオルグ「っ...!」

レラ「待って!」

2人は彼女を助けようと駆け出した。が、屈強な衛兵達に槍を突きつけられる。

「せいぜい身代わりがいた事を、有り難く思いな」

「見逃してくれた事に感謝しろ」

ゲオルグ「...ちっ!」

飄々として沈着冷静な彼さえ、思わず舌打ちをした。

ゲオルグ「身代わりだと思ってなどいない。僕に代えたらどうだ」

そう相手は持ちかけたが、それは無意味になった。

ヴェレーノ「離して...!離してったら‼」

羽交い締めされ、縄で身体を結わえられるヴェレーノ。

アイリス「ヴェレーノ...!」

ヴェレーノ「助けて...!やだ...やだ!」

今にも壊れそうなくらい、抵抗する彼女は泣き崩れる手前にあった。本当は怖かったのだ。
平気そうな態度で皆に接していたが、それは表だけで、裏はいつ自分が連れて行かれるか、いつ壊れるか分からないという恐怖に怯えていたのだ。しかし、彼女は何かに取り憑かれたような、毅然とした態度に変わった。
覚悟を決めた、そのものの顔を。

ヴェレーノ「ああ、もう!分かったよ‼勝手に魔女と言ってよ‼私で皆が助かるなら、それでいい‼レラ達には、手を出さないで!」

バシッと兵士の持っていた槍の柄が、地面に叩かれる。

「ヴェレーノ・ヒュパティア‼お前は今日からまごう事なき魔女だ‼」

もう、だめだ。この世紀末のような光景を眺め続けるのは、耐えきれない。弱い自己を守りたいという浅ましさは消えていた。ただ、彼女を助けたい。助けて、これから先も慕っていきたい。

レラ「彼女から...!」

と言いかけて、背後から手で口を塞がれた。
元教授の才媛だった。

アイリス「彼女の思いを無駄にしないで」

どうして、と問いかけるも、それはすぐに分かった。ヴェレーノを庇う事で、レラも魔女と疑われ、連行されるかもしれない。彼女は心を鬼にしながらも、そうしたのだ。

ヴェレーノ「ありがとう、アイリスさん...。私の思ってる事を理解してくれて...」

ヴェレーノは、そう言って哀しげに微笑んだ。

ヴェレーノ「レラ、ゲオルグ先生、アイリスさん...。頑張って生き延びるから待ってて」

「さあ来い!」

レラ「あ...」

ヴェレーノは、馬車に乗せられた。