オリキャラ短編集 14 (ページ16)

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業火 1 ページ16

学問と芸術の都。
古代からそう謳っていた華やかな都は、時を経て中世の真っ盛りにあった。これまでに多くの名高い芸術家や学者などが輩出されたが、近頃は見る気配がない。それでも多く人が訪れるのは、自身の未来を自ら鍛えて叶えたいという願望があったからだった。

レラ「大丈夫かな...」

歳は16の少年が、街を歩いていた。
都の大学に入る為に、遠路はるばるやって来たのだ。この時代と文化において、16歳は大人の仲間入りだ。
この少年はとある寒村に住んでいたが、賢い子だと皆から讃えられ、大学に進学するよう勧められた。
そして先程の呟きは、新しい環境に慣れるかという不安からの言葉だった。

レラ「住む所も探さないといけないし、うーん...」

賑やかな通りを歩いていると、騒ぎを聞いた。

「逆らう気か『魔女』が‼」

レラ「...⁉」

忌まわしい単語に、思わず驚いた。
そこには数人の屈強な役人が、1人の男を連行しようとしていた光景が広がっていた。
温和そうな彼は怪我を負ってしまったのか、顔にアザがあった上に、口元と頭から血が流れていた。

「ヴィルヘルム・ヨハン・エアハルト‼お前はこの国お抱えの劇作家でありながら、人心を惑わす物語を作り、それをおめおめと昨日に上演させたな‼劇団員も連行する!」

ヴィルヘルム「止めてくれ!私は、男女の清らかな恋を描いただけだ!彼等だけは、手を出さないでくれ!」

必死に訴える男に、更なる鉄拳が繰り出され、罵られた。

レラ「や、止め...」

声をかけるも、興奮している役人達には届かない。

ヴィルヘルム「私は、『魔女』じゃない...!」

「黙れ‼」

頭を掴まれ、馬車に詰め込まれた。罪人が乗せられる馬車だった。役人達も乗り込み、どこかへと連れて行った。あまりにも衝撃的で動く事が出来ずにいると、人々の声が聞こえた。

「ヴィルヘルムさんの劇が見られなくなったな...」

「あの人の素晴らしい劇を昨日観たけれど、とても感動したなぁ。...なのに引き出されるなんて...」

「本当、魔女狩りは恐ろしいな」

「そんな事言うなよ。『あの塔』にぶち込まれるぜ」

レラ「魔女狩り...」

噂には聞いていたが、間近で見るのは初めてだった。他人と違うだけで疑われ、死に追いやる悪行を。