月と深夜 ページ35
深夜。軽い寝息を立てているゲオルグは、ドアを叩く音に気付いた。目をこすりながら起きると扉が開かれ、入って来たのは
ゲオルグ「アイリス?」
いつも冷静な才色兼備である婚約者は、この時は不安をにじませていた。月明かりに照らされた絶世の美女は、とても美しかった。
アイリス「あの...隣に寝てもいいですか?」
添い寝という形になった2人。アイリスは眠りに就けなかった。
『美人はいいなぁ、色んな男から愛されるんだから』
『誰よりも綺麗なだけで、自惚れてるんじゃない?』
『何もかも完璧すぎるから、余計引くよねぇ』
こんな言葉は、慣れている。けれど時として
『あんたが綺麗すぎる所為で!婚約破棄されたのよ‼あんたがいいって婚約者が言って!責任取りなさいよ‼』
誰かの未来を壊してしまった。
『なぁ、そこの姉ちゃん。俺と遊ばない?』
恐ろしい思いをするほど、数多の卑しい男性から言い寄られ。
『うるさい、女は黙ってろ』
今まで交際してきた男性達は、彼女が美しい顔をしていたという理由だけで付き合い、手に入れた途端、横柄になった。彼と会うまで、誰も真剣に愛してくれなかった。
アイリス「っ...ぅあ...」
眠りかけたゲオルグは、再度目を覚ました。
隣にいる彼女が、子供のように嗚咽を漏らしている。
ゲオルグ「...」
女帝の如く毅然としている彼女。その心の中は、弱さを隠そうとする繊細な少女のようだ。美しい顔を眺める。これで、2度目だ。
最初に逢った時も泣いていた。
アイリス「月明かりが眩しくて...涙が」
顔を上げずに言うと、胸元まで引き寄せられた。彼の鼓動が聞こえる。自分も生きている証の音。細身ながらも、たくましい彼の腕が自分を包み込む。
ゲオルグ「こうすればいいだろう。眩しくないはずだ」
馬鹿を言うなと思った。涙が止まらなくなる。
抑えてもあふれる雫を、彼の胸に押し付けた。
アイリス「そんな顔で...言わないで下さい...」
その言葉を最後に、そのまま縋り泣いた。
ゲオルグは彼女の手も握って、片時も離さなかった。翌朝になって、いつものアイリスに戻った彼女は赤ら顔で、もう2度と子供みたいに貴方に泣いて縋ったりしないと言って、部屋を出た。それを、剽軽な笑みで学者は見送った。
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ルツ・ヒューイット(プロフ) - 新藤息吹さん» ありがとうございます!アンテをもしやるとしたら、ずっと平和ルートばっかすると思います(笑)フラウィー戦もヒーローアンダイン戦もやりたい気持ちはありますが、やりたくないです(笑) (2018年11月17日 21時) (レス) id: 62681feacb (このIDを非表示/違反報告)
新藤息吹(プロフ) - 面白かったです!見事にUndertaleにハマりましたね… (2018年11月17日 20時) (レス) id: 4a72550ddd (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - すぐ終わるかもしれない話です(笑)一応、ホラーチックな(?)ストーリーになります。 (2018年11月14日 22時) (レス) id: 62681feacb (このIDを非表示/違反報告)
新藤息吹(プロフ) - 面白かったです!体を温めてゆっくり休んでくださいね! (2018年10月26日 18時) (レス) id: 4a72550ddd (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - 訳ありまして、私ルツは...『ルツ・ヒューイット』というペンネームに変えます。呼び方はこれまで通り『ルツ』で大丈夫です! (2018年10月13日 18時) (レス) id: 62681feacb (このIDを非表示/違反報告)
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