検索窓
今日:16 hit、昨日:1 hit、合計:2,388 hit

月と深夜 ページ35

深夜。軽い寝息を立てているゲオルグは、ドアを叩く音に気付いた。目をこすりながら起きると扉が開かれ、入って来たのは

ゲオルグ「アイリス?」

いつも冷静な才色兼備である婚約者は、この時は不安をにじませていた。月明かりに照らされた絶世の美女は、とても美しかった。

アイリス「あの...隣に寝てもいいですか?」

添い寝という形になった2人。アイリスは眠りに就けなかった。

『美人はいいなぁ、色んな男から愛されるんだから』

『誰よりも綺麗なだけで、自惚れてるんじゃない?』

『何もかも完璧すぎるから、余計引くよねぇ』

こんな言葉は、慣れている。けれど時として

『あんたが綺麗すぎる所為で!婚約破棄されたのよ‼あんたがいいって婚約者が言って!責任取りなさいよ‼』

誰かの未来を壊してしまった。

『なぁ、そこの姉ちゃん。俺と遊ばない?』

恐ろしい思いをするほど、数多の卑しい男性から言い寄られ。

『うるさい、女は黙ってろ』

今まで交際してきた男性達は、彼女が美しい顔をしていたという理由だけで付き合い、手に入れた途端、横柄になった。彼と会うまで、誰も真剣に愛してくれなかった。

アイリス「っ...ぅあ...」

眠りかけたゲオルグは、再度目を覚ました。
隣にいる彼女が、子供のように嗚咽を漏らしている。

ゲオルグ「...」

女帝の如く毅然としている彼女。その心の中は、弱さを隠そうとする繊細な少女のようだ。美しい顔を眺める。これで、2度目だ。
最初に逢った時も泣いていた。

アイリス「月明かりが眩しくて...涙が」

顔を上げずに言うと、胸元まで引き寄せられた。彼の鼓動が聞こえる。自分も生きている証の音。細身ながらも、たくましい彼の腕が自分を包み込む。

ゲオルグ「こうすればいいだろう。眩しくないはずだ」

馬鹿を言うなと思った。涙が止まらなくなる。
抑えてもあふれる雫を、彼の胸に押し付けた。

アイリス「そんな顔で...言わないで下さい...」

その言葉を最後に、そのまま縋り泣いた。
ゲオルグは彼女の手も握って、片時も離さなかった。翌朝になって、いつものアイリスに戻った彼女は赤ら顔で、もう2度と子供みたいに貴方に泣いて縋ったりしないと言って、部屋を出た。それを、剽軽な笑みで学者は見送った。

少年と夜と→←美青年は天使を憎む



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (1 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:オリキャラ , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ルツ・ヒューイット(プロフ) - 新藤息吹さん» ありがとうございます!アンテをもしやるとしたら、ずっと平和ルートばっかすると思います(笑)フラウィー戦もヒーローアンダイン戦もやりたい気持ちはありますが、やりたくないです(笑) (2018年11月17日 21時) (レス) id: 62681feacb (このIDを非表示/違反報告)
新藤息吹(プロフ) - 面白かったです!見事にUndertaleにハマりましたね… (2018年11月17日 20時) (レス) id: 4a72550ddd (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - すぐ終わるかもしれない話です(笑)一応、ホラーチックな(?)ストーリーになります。 (2018年11月14日 22時) (レス) id: 62681feacb (このIDを非表示/違反報告)
新藤息吹(プロフ) - 面白かったです!体を温めてゆっくり休んでくださいね! (2018年10月26日 18時) (レス) id: 4a72550ddd (このIDを非表示/違反報告)
ルツ・ヒューイット(プロフ) - 訳ありまして、私ルツは...『ルツ・ヒューイット』というペンネームに変えます。呼び方はこれまで通り『ルツ』で大丈夫です! (2018年10月13日 18時) (レス) id: 62681feacb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ルツ・ヒューイット | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2018年9月5日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。