オリキャラ短編集 2 (ページ49)

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静寂の邂逅 episode ページ49

いつもの通い慣れた学校から帰る。

シシィ「...ううっ...っ...」

腕で泣き顔をこする。これ以上こすり上げたら、肌が剥がれるのではないかと心配する程、少年は1人泣きながら歩いていた。

「おい、また弱虫が泣いてやんの!」

シシィ「っ...!」

悪戯ばかりする同級生らと鉢合わせしてしまった。無視して通り過ぎたが

「やーい、泣きべそ!」

「女みたいに泣きやがって!」

「お前、明日から女扱いするからな!」

耐えきれなくなって、走り出した。目から流れる雫は、大粒の雫に変化した。そして、無事に家の前に着いた時だった。

「本当に可哀想だわ」

近所の住人が、母と話をしている。住人は悪びれもせず言い募る。

「シシィ君よ。あの子はお父さんがいなくて心細いから、毎日泣いているんでしょう?再婚を考えたら?」

ただでさえ学校で毎日辛い目に遭っているのに、近所からの哀れみの言葉で、更にズタズタに心が刻まれる。

「シシィ」

母は我が子に気付き呼んだ。すぐに家に飛び込むと自分の部屋に駆け上がり、扉を閉めた。そしてベッドに飛び込み、激しく泣いた。

シシィ「どうして...?僕、何かしたの...?」

嗚咽を漏らしながら、誰にともなく訴える。勉強を頑張って、家事を手伝って、気持ちよく環境を整えても僅かに報われる事がなかった。思い当たる悪い節は、一つも思い至らない。友人は1人も出来ず、いつも1人。

シシィ「...頑張らなきゃ...」

賢くなって、優しい心をずっと持っていなければ。内面を磨き続ければ、きっと苛められずに済むはずだ。そう思ったが、少年はずっと泣いていた。

「シシィ?」

母親が入ってきた時には、我が子は泣き疲れて眠っていた。目元はすっかり腫れ上がり、まだまつ毛が湿っていた。その顔を、そっと触れる。

「大丈夫...」

母親は、優しくそう呟いた。
そうだ、この子はとても優しくて賢いから、必ず愛してくれる人が現れる。
そう信じ続けてくれたら、きっと叶えられるのだ。目を閉じて眠る少年は、その言葉に反応するかのように、顔を僅かに動いていた。
やがて大人になった女々しい青年、シシィがウェイターになり、とある寝台列車で働いた時に、新聞記者と家庭教師の知友と出逢い、そこで起こった事件に遭うのは、先の話の事である。

END