オリキャラ短編集 2 (ページ42)

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とある夫婦ページ42

タラサ・ハドソンの妻、ルサールカは我が子を抱いていた。産まれたばかりの、この世の汚れや闇も知らない美しい寝顔。

ルサールカ「...」

赤子が眠るベッドの真上に、メリーゴーランドのようにカラカラと回るおもちゃ。起きている時の愛娘は、これを見ると良く笑ってくれる。
彼女は、不安を抱えていた。育児や家事に対する不安も多少なりともあったが、それとは別だ。

ルサールカ「...タラサ」

夫の名を呼んだ。愛する夫を。愛してしまった夫を。

ルサールカ「本当の私を知ったら、どんなに驚くかしらね...」

これから先の不安を呟いた。人魚のように魅惑的な身体と顔立ちをした彼女は、自嘲気味に笑っていた。すると、赤子がぐずり出した。

ルサールカ「あ、ああ...ごめんなさいね...」

初めて母親になったものだから、戸惑うのも無理はない。ひたすら、なだめた。ミルクを与え、オムツを替えたばかりだというのに。とても繊細なのだろう。

タラサ「ただいま」

戻ってきた夫の声に、ハッと気付く。無垢な泣き声に気付いた相手は、すぐにリビングに飛び込んだ。

ルサールカ「あなた...モーリェが...」

泣き喚く娘を視認すると

タラサ「大丈夫だ」

と落ち着いた声で、子供を抱いた。まだ泣いているが、慈愛に満ちた顔のまま、落ち着き払っている。

タラサ「養護施設にいた頃を思い出すな。こうやって、赤ちゃんの面倒を何度も見てきたから自然と分かる」

ルサールカ「...あなた...」

彼は、ニコリと笑って振り向いた。

タラサ「休んだらどうだ?眠ってもいい。後は俺がやる。家事も、モーリェの面倒も。遠慮するなよ、家事は女だけがやるものじゃないんだから」

口元が、フッとほころんだ。

ルサールカ「...ええ、分かったわ」

ソファで自然と眠りに就いた時、娘の泣き声が収まった気がした。次に目を覚ました時には、
娘を抱くタラサが隣に座っていた。

タラサ「全て片付けたぞ」

微笑んで応えた。

ルサールカ「ありがとう、あなた...」

彼女は1人、自室に入っていた。机の上には、3通の手紙。『来世』や『現世』、『前世』とそれぞれ書かれた手紙。メノーレという郵便配達員が、数年前にくれたものだ。

ルサールカ「...言われなくても、受け容れるわ」

ルサールカは、覚悟を決めた顔で呟いた。