オリキャラ短編集 2 (ページ31)

今日:31 hit、昨日:0 hit、合計:5,434 hit

オリキャラ昔話特別編醜いシンデレラと灰被り悪魔 2 ページ31

今まで無名の存在だった庶民が、こんなに有名になったのだ。案の定、そこでも言い寄られた。彼女は綺麗な顔立ちをしていたのだから、特に品の良い男性からアプローチされた。
しかし、いくらおだてたり褒め称えても彼女は、鼻の下を伸ばしたり照れたりしなかった。楽しい空想をしているような顔のまま、たった1人、バルコニーへと足を運んだ。

デイジー「やれやれ、大変だわ」

どうにも面白くない。誰も彼も、彼女の上っ面に惹かれているのだ。彼女の本質を理解していない。可憐な容姿の少女は、黒い瞳を夜空に向けた。昔から、美しい物よりも汚らわしい物に美しさを感じたり、立派な行いをした聖人君子よりも、数多の犠牲をもたらした独裁者などの悪にある種の魅力を感じていた。こんな変わった性質を持っていると知ったなら、たちまち引いてしまうだろう。

「お客様」

ふと、声をかけられた。そこに、1人の青年が立っていた。大学生になったばかりの歳に見える。身なりは清掃員だ。制服を着ていたのだから。暗紫色の瞳が綺麗な、濃いピンク色の熊の美青年。知性と高貴な血が流れていると思わせる魅力があった。
名札には『イワン・アレクセーエヴィチ・アリオール』。

イワン「どうかなさいましたか?」

デイジー「ちょっと...疲れちゃって。知ってる人なんていないから。それに、皆が思っているほど、あの人達に興味を惹かれないわ」

イワン「...私も、同じ事を思ってました」

青年は静かに言った。

イワン「私だけではなかったのですね」

彼女は話を始めた。

デイジー「貴方、中々の知性があるわね。皆はシンデレラみたいって、私に向かって言うけれど、私はね、自分の事を醜いシンデレラって思っているわ。シンデレラにしては純粋可憐ではないし、何より私は、猟奇的な事を考えるのが大好きなのよ。特に...人の内にある醜い本性がね」

彼女の言葉に惹かれたのか、青年は尋ねた。

イワン「それでは、貴女様は私の事をどうお思いでしょうか?正直に仰って下さい。私も、私の内にある本質を理解したいのです」

清掃員には似つかわしくない、上品な言葉や振る舞い。やはり高貴な一族の生まれなのだと彼女は確信した。そしてなにより、今まで出会ったどの男性よりも、変わった気質を持ってそうだった。