オリキャラ短編集 2 (ページ27)

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オリキャラ昔話特別編汚れた白雪姫 3 ページ27

彼は、勝手に身の上話を始めた。
血筋は良いが、理想を押し付けてくる厳しい家に生まれた事。政治家になってほしかった家族の反対を押し切って、薬剤師の道を選んだ事。大学に通っているが誰ともとも仲良くせず、独り暮らしで黙々と勉学に励む変人の苦学生で有名だと。

ヨーゼフ「ここへ来たのは、この地域は都会に近くにありながら、静かでどこよりも安い。それだけだ。大学はどこもかしこも、口やかましい者だらけで集中出来ない。カフェも同じだ。遊興など興味無い。...勉学は良いものだと言うがそれなら何故、する場所が限られるのだ?」

シュネー「...あたしは、あんたを追い出さない」

彼女はそう言って、ニカッと笑った。いつも浮かべる笑顔の一つだ。

シュネー「あたし、あんたの事嫌いじゃないよ」

それを聴いた彼は立ち上がり、彼女の前に立った。

ヨーゼフ「見たところ、平均体重より軽そうだな。冷え症もあるだろ?あまりロクな物を摂ってない証拠だ」

それを聴いた彼女は怒ったり恥ずかしがるどころか、楽しそうに笑った。

シュネー「探偵だな、あんた。ドンピシャだ!」

ヨーゼフ「分かったら、パンとスープだけの食事を改善させろよ。まだ暑いが、冬はあっという間だ」

シュネー「ありゃりゃ、そこも推理済みか」

青年は身支度を整えると、出て行った。かと思いきや、再び現れ

ヨーゼフ「明日も来る」

と、アパートを後にした。彼女は飄々とした笑みで見送った。これが、一番よく浮かべる笑顔だ。次の日からというもの、笑顔を見せない寡黙な青年は、毎日彼女の部屋に来ては薬剤師の勉強に励んだ。黙って机に向かう彼の後ろ姿と横顔が、すぐに好きになった。

シュネー「これは...?」

渡されたバスケットに、青年は答えなかった。そこには、不器用だが栄養を考えた弁当が、いつも入っていた。彼女の為に毎日持ってくるそれを、喜んで食べた。とても美味しかった。
そのうち、彼が持ってくる薬剤師の本を手にして読むようになった。今まで読んだどの本よりもとても面白いと感銘を受け、暗唱出来るまでに上達したが、彼は怒らなかった。

ヨーゼフ「好きなだけ読めよ」

彼は、それだけを言った。心なしか、彼の表情は緩んでいるようだった。2人だけの心地よい時間。それが何よりも愛おしく、美しいものだった。