オリキャラ短編集 2 (ページ20)

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オリキャラ昔話 2 ページ20

ヴェレーノ・ヒュパティアには、大好きな叔母がいた。バイクを乗り回し、毒植物を育てている変人と有名であったが、名付け親でもあったので、もう1人の母親のように甘えた。

ヴェレーノ「おばさん、これなあに?」

あれは5歳だったか。遊びに来た時に指差したのは、小さな花だった。

「マンドレイクよ。マンドラゴラとも言うわ」

ヴェレーノ「マンド...レイク?」

叔母は少女に、その植物の事を詳しく語った。綺麗な小さい花を咲かすが、毒を持っている。作り話では、引っこ抜くとやかましい悲鳴で、聴く者の気をおかしくさせると。その時知った単語が、頭に焼き付いた。

ヴェレーノ「『どく』って、なあに?」

無邪気に首を傾げる姪に教えた。

「そうね...。それは命を落とす怖い物だけど、使い方によっては、命を救う事が出来る物よ」

それを聴いても、まだ5歳の少女には理解出来なかった。しかし、覚えたその単語を熱烈に惹かれたのに時間はかからなかった。
無垢な少女の口からその単語が出る度に、大人達は眉根を寄せた。その度に叱られたが、意味が分からなかった。何年か経ち、ニュースで度々流れる情報を聴いた。
『◯◯さんが、◯◯さんをヒ素で殺した』。『使われた毒は、トリカブトで...』。
その情報を見聞きした大人達は、よく言った。

「毒なんて恐ろしい」

それを聴いて、子供心に分かった。毒は様々な人に忌み嫌われ、毛嫌いされる存在。そんな物に惹かれるのは異常者だと。まるで、大好きな叔母を馬鹿にしているように思えてならなかった。

ヴェレーノ「そんなことないもん!」

両親や大人達に向かって、地団駄踏む少女は言った。

ヴェレーノ「おばさん、いってたもん!『毒は怖い物だけど、良い物にもなる』って!どくを悪者あつかいしないでよ!おばさんが、どくが好きなら、ヴェレーノも、どくをすきになる!」

少女は叔母から毒に関する勉強を始めた。教えられるその知識に、惹かれる日々。しかし数年後、叔母が亡くなった。自らヒ素を飲んで。
新しいバイクを買った直後の事だった。

ヴェレーノ「叔母さん...私に大好きな世界を教えてくれて、私嬉しかった...」

最期に教えてくれたのは『決して、毒を人を殺す為に使ってはいけない』だった。ヴェレーノが叔母の形見を乗り回し、毒に博識になるのは少し先の話。