HTF小話集と短編集！！そのⅤ (ページ33)

今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:7,034 hit

嘘の行方1 ページ33

黒猫の少女、Aはハッピーツリータウンに来たばかりの住人だ。
ハッピーツリータウンがどんな場所なのかとっくに知っていたが、それで気味悪く思う事はなかった。彼女は正直な性格だった。周りに友達が出来ていくのに、時間がかからなかった。

フレイキー「ねぇ、A」

ある日のこと。彼女の友達の1人、フレイキーが突然尋ねた。

フレイキー「Aは、嘘を吐いた事が無いの?だって、いつも素直に言うから...。皆は、表裏の無い性格だって言うけれど...」

Aはそれを聞いて、少しだけ寂しさを帯びた。

A「嘘...か。小さい頃から幾つかの嘘を吐いた事があるけれど、あの日から全く、嘘は吐いてないんだ」

フレイキー「あの日?」

Aは語り始めた。それは14歳の頃だった。あの日はエイプリルフールの休日で、共働きの両親は休んでいた。Aの家庭は不幸からかけ離れた境遇で、特に不満も無くそれなりに幸せだった。嘘を吐いてもいいこの日に、Aは嘘を言う事にした。

A「お父さん、私好きな人が出来たの」

「おお、そうかそうか。それはよかった」

嘘だと分かっていながらそれを喜ぶ父。良い嘘を言うだけなら良かった。次に母親に嘘を吐くことに決めた。

A「お母さん、私、実は帰る途中で素敵な人から挨拶されたの。俳優みたいにかっこいい人だったよ。その人と仲良くなってね。しかも、お母さんのお知り合いだったの。お母さん羨ましいなぁ、あんなカッコいい知り合いがいて。名前も聞いてきたんだ、ジェームズさんだって」

そこまでを言って、Aはハッとした。母親が凍りついた表情をしている。

A「お母さん?」

母親は次の瞬間、Aに平手打ちをした。そして取り憑かれたようにヒステリックに泣き喚いた。父親はそれを押さえるのに必死だった。後から知ったが、母は浮気をしていた。去年から続いていて、相手の名前はジェームズだった。自分の言った、根も葉も無い作った嘘が実は本当だったのだ。嘘から出た真だった。自分の嘘が、大好きな親の秘め事を明らかにしてしまったのだ。

「なんで貴女が、そんな事を言うのよ‼酷すぎるわA...!死んじゃえばいいのに...!」

母親の言われた言葉が、心に突き刺さった。数ヶ月後に両親は離婚。Aは父親に引き取られた。