HTF小話集と短編集！！そのⅤ (ページ22)

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ハロウィンのレクイエム 3 ページ22

童話作家のポップは、明日出す原稿の締切に追われていた。この日は神経がとてつもなく張り詰めていた。些細な事でも苛立ちを露わにしてしまう事が、しばしばあった。誰もが抱く感情ではあったし、本人も持っていた。あの時を後悔するまでは。固定電話のベルが鳴り響く。

ポップ「もしもし」

相手は、身体の弱い妻からだった。

『貴方...お仕事、頑張っている?最近、見舞いに来てくれないから、寂しくて...』

ポップ「ああ、今これから原稿の最終段階に来ているからそれどころじゃない」

苛立ちの含んだ早口に、受話器の向こうの声が気がかりを帯びた。

『少し、休んだら?貴方が少し、怖いわ。私...少し前まで苦しんでいたけれど、やっと落ち着いたのよ。貴方の事だから、少し位休んでもいいのよ』

余計な情けの言葉に、遂に怒気を露わにしてしまった。

ポップ「余計なお世話だ‼作家は休む暇なんて無いんだよ‼どうして解ってくれない⁉こんな事をしている暇があるなら、さっさと原稿に集中したいんだよ‼しばらく、かけてこないでくれ‼忙しいから後にしてくれ‼」

相手の返事を聞かずに、無造作に受話器を置いた。そして数時間は机に向かった。原稿が書き終え、一息ついた。酷い事を言ってしまった。その事を謝ろうとスマートフォンを出した時、そのベルが鳴り響いた。

ポップ「もしもし?」

『もしもし、ポップさんですか?大変です、奥様の容態が急に...』

急いで病院に駆けつけたが、既に手遅れだった。彼女は容態が悪化し亡くなった。それは、夫が怒鳴ってから数時間が経った事だった。

ポップ「私が、あんな事を言わなければ...。私が、彼女を殺してしまったんだ...」

綺麗に整えられていくベッドを眺めながら、ポップはそう呟いた。

『貴方ああああああああ‼』

亡霊の叫び声に、一気に現実に連れ戻される。

ポップ「あ、あ...!君...!」

光の無い空洞の目が、睨みつけてくる。

『絶対...許さないわよ...!貴方の所為よおおおおおおお‼』

そう言って、夫の首を締めようとした。

ディスコ「ポップ!」

ポップ「...⁉」

ディスコ「いい加減にしろ‼あんたが愛した妻(おんな)は、こんな事を言うような女だったのか⁉お前を愛してくれた奥さんが、こんな酷い言葉をあんたに吐くのか⁉」

その言葉でハッとした。