罪 「欲」 ページ5
彼女の視線の先を追うと、其処には赤いルビーがあしらわれた、髪留めがありました。
確かにそれは美しく光り輝き、僕の目をも魅了する程のものでした。
きっと彼女はその美しさに目を奪われたのでしょう。
「此れが欲しいのですか?」
普段は欲を出さない彼女が此れ程見詰めているのですから、僕の想像では彼女が欲しているのではないかと思っていました。
すると彼女はその髪留めから目を離さずに言うのです。
「………フョードルの…瞳に似てる…。綺麗…。」
然しそれだけ言うと今度は視線を値札に移し、「でも…今の私じゃ…買えない……。」と言って其処を離れようとします。
確かにそれは僕の瞳とよく似た色をしていますが、何故それが今まで売れなかったのか予想はつきます。
「………なかなかヘビーな額ですね…。」
それは単に高額過ぎるというのもあるでしょうが、流石に常人が此れを手に入れられる程の金額を所有しているとは思えません。
残念ながら彼女の言う通り、今の僕達ではとても手が届かない品でした。
僕はその様な事を考えて硝子の前に立っていると僕を呼ぶ声に気付きました。
「フョードル、行きましょう……。」
彼女に目を向けると何処か悲しげな表情をしているのが見えた気がしました。
その表情の理由ははっきりとは分かりませんが、きっと彼女はあの髪留めを「欲しい」と思っていたのでしょう。
それは彼女が僕に初めて見せた最初の「欲」。
初めて欲を出してくれたというのに、僕はそれを叶えられなかった事に少々切ない気持ちが心の奥底に落ちていきました。
それからまた少し歩き、そろそろ帰ろうとした頃でした。
ふと彼女が口を開きました。
「………フョードル…雪……。」
「雪…ですか…?」
僕はそう言われて空を見上げると、ちらちらと白い雪が舞い降りて来るのが分かりました。
「ふふっ、寒くなる前に帰りましょうか。」
微笑みを浮かべて彼女に尋ねると、「えぇ…。」と言ってまた歩き始めるのでした。
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ぽいふる(プロフ) - 海璃さん» 有り難う御座います!更新が遅れてしまっているので、頑張ります!これからも応援宜しくお願いします! (2018年12月5日 11時) (レス) id: e8bdc43140 (このIDを非表示/違反報告)
海璃(プロフ) - 入りから凄く面白いです!更新楽しみに待ってます(*^^*)頑張って下さい!! (2018年11月29日 12時) (レス) id: 36e39e0c71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽいふる | 作成日時:2018年9月15日 19時