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私達は、学ランさんのお家に向かって、歩き始めた。
…歩き始めて自分が日傘を差していないことに気づき、傘を差す。
学ランさんの隣に並んで歩くのは気が引けたので、数歩後ろを歩く。
会ったばかりの人と話す話題など見つからなかったので、とりあえず学ランさんの事を観察してみることにした。
学ランさんは育ちが良いのか、歩き方がとても美しかった。
背筋はピシッと伸びていて、足の出し方、手の振り。
男の子に“美しい”なんて少し変な感じだが、彼を表現するにはこの言葉がぴったりだった。
学ランさんはその優美さ故か否か、近寄りがたい雰囲気を纏っていた。
……いや、あんな物騒な鉄の棒持っていたら誰も近寄らないかもしれない。
何というか謎の人、だなぁ。
うーん………あれ、謎？
あれ？
私、学ランさんの名前、知らないかもしれない。
というか、私も名乗っていない。
お家に泊めて頂くのに名乗っていないなんて、失礼だよね…。
………ゔああぁ。
ごめんなさい、ごめんなさい。
でも、私から話しかけるなんて無理です。
そんな度胸、私にはありません。
わぁ、どうしよう…。
…この時、学ランさんは立ち止まっていた。
が、俯いてうじうじと考え込んでいたため、私はそれに気がつけなかった。
気がつかないのに、止まることなんて無い。
つまりは…
「へぶっ」
学ランさんの背中に激突！
学ランさんが振り返る！！
学ランさん、般若！！！
そして、ついでに私が差している傘も彼に当たりそうに…。
「･･･君は、前を見て歩くことができないの？」
「すっ、すみません…。」
「次は無いから。」
「は、はいっ」
こ、
ここ、
怖かったああぁぁぁっ！！
切れ長のあの眼で睨まれた時の迫力は、凄かった。
しかし、ホッとしたのも束の間。
「君、名前何ていうの？」
「はいっ！？」
急に話しかけられ、反応が遅れてしまった。
そして、何て言われたかわからないのに反射的に返してしまった。
ど、どどうしようっ……！
すると、学ランさんは「はぁ」と溜息をつき、
「名を名乗れって、言ったんだよ。」
話、聞いてくれない？
と、呆れられてしまった…。
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作者名：ククリ | 作成日時：2019年8月29日 1時
