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「とにかく、部屋に連れてくから。」
「はい、ありがとうございます。」
彼の後ろを歩くと、私が使って良いと言われた部屋にたどり着いた。
「じゃ、おやすみ。」
「はい、おやすみなさい。」
雲雀さんについて、今日一日でなんとなくわかったことがある。
あの人は、少し怖い雰囲気の人だけど優しいところもある人だ。
見ず知らずの私に泊まる場所を用意してくれた。
さっきだって、肌見離さず持っていた鉄の棒で殴ってもよかったのに手加減をしてくれた。
遠くなっていく背中を見て、自然と笑みが溢れた。
彼の後ろ姿が見えなくなって少ししてから、私は戸を開け、部屋の中に入った。
部屋の時計を見ると、今、午後九時頃であることがわかる。
「寝るには少し早い気もするけど、寝ようかな。」
押入れから布団を出し、畳に敷く。
部屋の照明を全て消し、掛け布団を被る。
…この布団、とても寝心地が良い。
敷き布団は硬すぎず柔らかすぎず、掛け布団は軽いのに保温性抜群。
枕も頭と首にピッタリとフィットする。
雲雀家の布団は人をダメにする布団だ。
＊ ＊ ＊
チュンチュン。ピチチ。
目覚めてまず聞こえたのは、そんな鳥の声。
「……あさ。」
ぼんやりする目でキョロキョロと辺りを見回すと見知らぬ和室──否、雲雀さんに借りた部屋だった。
まだぼんやりした頭で、昨日のことを思い出す。
気づいたら眠っていて、気づいたら次の日の朝で…。
なんか、凄く寝心地がよかった。流石、人をダメにする布団。
時間を確認すると、6時前。
眠い目をこすりながら戸を開け、少し大きい寝間着の裾をずるずる引き摺りながら廊下をとぼとぼと歩く。
あくびを噛み殺し、居間の戸を開ける───
「……あれ、ここ居間じゃない。」
うん、なんとなくそんな気がしていた。
この家の間取りを覚えるのは時間がかかりそう。
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作者名：ククリ | 作成日時：2019年8月29日 1時
