ひとりじゃない証-No.3- 【金田一少年の事件簿】初代実写版

13話 ページ29

岩田「しかし犯人はどうしてそんな回りくどい事を…」


一「柿本さんの死亡推定時刻は？」



はじめちゃんがそう問いかけると、矢萩さんはメガネをかけた。



矢萩「四半と死後硬直から考えると…今から、8時間〜10時間前。つまり昨夜の10時から12時の間だ」



ズボンのポケットから懐中時計を出しながらそう言った矢萩さんに八十島さんが「なるほど!」と声をあげる。



八十島「わかったぞ。つまりその時間の全員のアリバイを調べれば、おのずと招かれざる客が浮かび上がるってわけだ」


岩田「しかし昨夜のその時刻には柿本様以外の全員がこの母屋に集まっていましたよ」



岩田さんの言葉にソファに座っていた美雪が「そうよ」と立ち上がる。



美雪「トイレやお風呂なんかで外出した人もいるけど、みんな15分前後で部屋に戻って来たわ」



するとはじめちゃんが「ちょっとこれを見てください」とテーブルの上にノートを置いた。
それを囲むようにみんなが集まる。
それはこの周辺の地図だった。



一「この母屋から柿本さんのコテージまではどんなに急いでも往復30分はかかる。つまり…」


『ここにいる全員にアリバイがあるってことになる』



呟くようにそう言うとはじめちゃんが頷いた。
みんながあたしの言葉に顔を上げて見合わせ合うと、後ろにある棚に並んでいる像と日本人形を見た。



碧「まさか……本当に山童の呪いじゃ」


クリス「いや」



聞こえてきたクリス君の声にあたしたちは振り返った。



クリス「アリバイに関係なく、柿本さんを殺せる人間が一人だけいるよ」



あたしとはじめちゃんはクリス君の言葉に顔を見合わせた。



クリス「もし、この死亡推定時刻がずれているとしたら、いや…わざとずらされているとしたら…」



立ち上がってあたしたちの方へと近づいてきたクリス君がそう言うと、矢萩さんが立ち上がってクリス君を見下ろした。
「そうか」と八十島さんが立ち上がる。



八十島「わかったぞ。矢萩、貴様…自分に都合のいい時間をでっち上げて自分のアリバイを作ったんだな」


矢萩「冗談じゃない!俺が嘘の鑑定をしたというのか!」



クリス君のネクタイを掴む矢萩さんを見て、はじめちゃんが「ちょっと待った!」と立つ。
あたしも体を起こして矢萩さんたちを見た。



一「クリスの推理には矛盾がある」



はじめちゃんの言葉に皆が彼を見た。



一「矢萩さんが嘘の鑑定をしたとしたらどうして全員にアリバイがある時間を証言したんだ」

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