ひとりじゃない証 【金田一少年の事件簿】初代実写版

8話 ページ41

先生が食事を終えてから1階のロビーの椅子に座って考え事をしている時。
あたしとはじめちゃんがりんごとバナナを食べていると美雪に耳を引っ張られて先生のいる1階まで強制的に連れてこられた。



『痛い痛い痛い痛い痛い!!』


一「痛ぇよ、お前!痛ぇよ!!」


『痛いって美雪!』



美雪は階段を下りて先生の傍まで来るとやっとあたしたちの耳を離した。
いたぁ…。とりんごを持っていない手の方で耳を擦る。


容赦ないなぁ、もう。



一「痛いなぁ!」


美雪「さ、行くわよ」


『行くって何処に行くわけ!?』


美雪「若葉を奪い返しに行くのよ…!」


一「『へ？』」


風祭「どうかしましたか？」



階段の上を見上げるとワインを片手に持った風祭さんがいて、あたしはりんごを、はじめちゃんはバナナをゴクンと呑み込んだ。



一「あの、どうして教会で花嫁が一晩過ごしたりするんですか？」



風祭さんは階段を下りてきながら答えてくれる。



風祭「この村に教会が出来た時からの古いしきたりですよ。結婚前夜、花嫁はこれまでの罪を悔い改めるんです」



風祭さんは先生の肩をポンと叩いた。
あたしとはじめちゃんはりんごとバナナを片手に風祭さんの話を聞く。



風祭「付き添いの女性が1人で教会の入り口の前に立ち、寝ずの番をしている間、花嫁は1人きりで教会の中に籠ります。そして用意されたベッドに横になり目を閉じて夜通し祈りを捧げ続けるのです」


一「『ふ〜ん』」



あたしとはじめちゃんがそう言った時、カーンカーンカーンと鐘の音が鳴り響いた。
風祭さんが「ん？」と教会のある方を見る。



美雪「これもしきたりなんですか？」


風祭「…いや。この村で鐘が鳴るのは、葬式の時だけだ……。様子がおかしい」



風祭さんはあたしたちを振り返ってそう言った。
それにつられて美雪があたしとはじめちゃんを振り返る。
あたしが教会の方を見ながらりんごをシャクッと齧ると、その隣ではじめちゃんがバナナを食べようとしたが口を開けた先にはバナナは無く、すかっと空振りしていた。
気付いたはじめちゃんはちゃんとバナナを口の中に入れて食べるのだった。

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