吠舞羅のお姫様 (ページ35)

今日:7 hit、昨日:4 hit、合計:43,970 hit

-３- ページ35

世理「…まったく。いくら赤のクランの人間とはいえ、子供を危険に晒すわけにはいかないから説得を任せてみたっていうのに…。私がバカだったわ」

出雲「あーもう、堪忍して。…どないしようかな」

世理ちゃんがドアに背を預けるのを見て華奈も背を預けた。
冷たい言葉を浴びさせられて華奈の心はもうグサグサと刃物が刺さりきっている。
出雲は世理ちゃんの言葉に窓から顔を出して華奈越しに世理ちゃんを見ると、頭を抱えた。

多々良「いいんじゃない？もう放っておいてあげても」

華奈,出雲「はぁ？」

多々良「アンナの顔、大丈夫そうだったよ。それにさ、普段わがまま言わないアンナがああ言い張るんだから、いいんじゃないかな」

確かに必死そうな顔はしてたけど…。
華奈と出雲は何だか納得がいかなくて顔を見合わせた。

世理「…それにしても、あの馬。いい馬ね」

-Aside-

馬刺しが此方に駆けてくるとビクッと足を止めた。

アンナ「ミコト…サヤカ…」

煙草を吸う尊の隣で私は片手を腰に当てながら馬刺しを見る。
アンナが焦ったように此方を見るのを見て、あたしは額を抑えながら「はー…」と長い溜息を吐いた。

『世話焼かせないでよ』

ブルルッと一歩下がりながら震える馬刺しに私と尊は靴音を鳴らしながら近づいた。
馬刺しの前で立ち止まると、アンナが必死な顔で私たちを見た。

アンナ「…っミコト、サヤカ、あのね…」

尊「で、どうしたいって？」

被せるように尊がそう言うとアンナは言葉に詰まりながら私を見た。
私もアンナを見返す。

アンナ「…この子が行きたいところに行かせてあげたい」

尊が煙をはーー…と吐く。
そして私と視線を合わせると、私は踵を返して歩き出した。
それに合わせるように尊も馬刺しの手綱を持って歩き始める。
勝手にどこかに行かれては困るので、手綱を握ったのだ。
隣合わせに歩く私と尊をアンナは嬉しそうな顔で見ると、小さな声で言った。

アンナ「…ありがとう」

仕方ないという笑みを浮かべてアンナを振り返って微笑む。
そして前を向き直した時に橋の上に立つ人影に気付いた。

『尊…』

尊「見んな。陰険がうつんぞ」

尊はそう言って私の目を手で覆った。
どんだけ見せたくないんだ。

あそこにはいたのは青の王ーーー宗像礼二だった。

八田「尊さーん!Aさーん!」

橋を通り過ぎると前から八田ちゃんたちが来た。

八田「馬刺し、捕まえたんすね!やっぱ2人ともすげー!」