吠舞羅のお姫様 (ページ34)

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女性の声がして、見知った顔が此方に近づいて来た。

「あっ、淡島副長…!!」

出雲,華奈「どーもー」

ビシッと気を付けをする青服の後ろから華奈と出雲が声をかけると、世理ちゃんがピクと動きを止めた。
それに対して華奈と出雲はにっと笑みを浮かべる。

世理ちゃんとは青のクラズマンとかそういうのを抜きにしてお互いに仲良しである。
Aも混ぜて3人で買い物に行ったりしてるしねぇ。
だが、世理ちゃんが一番かわいがっているのはAなのだ。
華奈は出雲と同じような扱いである。
つまり、簡単に言うと扱いが雑という事だ。
寂しいけどね。
まぁ華奈の場合、Aに被害がなければ何でもいいから。
だけど、Aも世理ちゃんの事気に入ってるからなぁ…。

それから青服の車に乗り、華奈たちは馬刺しに乗って道路を駆けているアンナを追いかけた。
馬刺しの横に車をつけて、華奈と世理ちゃんの前に多々良と並んで座っていた出雲が窓を開けてアンナに呼びかける。

出雲「よっ、大丈夫かー？」

アンナ「なんで？青の車…」

多々良「ちょっとの間の共同戦線だよー」

出雲「俺に掴まり。こっち移るで」

出雲が手を差しだすと、アンナはそれに対してフルフルと首を横に振った。
多々良と出雲の間から顔を出してアンナを見る。

アンナ「この子行きたいところがあるの」

華奈「行きたいところ？」

アンナ「会いたい人がいるの。…ごめんね」

アンナのその言葉が合図のように馬刺しはカッと地を蹴ると、

出雲,華奈「あ」

タッと下に降りてしまった。
急いで車を停めるように言って、華奈は車を降りると橋の下を覗き込んだ。
だがもう、馬刺しは走り去った後のようで、どこにも姿は見えなかった。
思わず溜息を溢す。

華奈「ありゃー…高速下りちゃった…」

肩を竦ませながら車に戻ると、世理ちゃんと多々良が体を揺らした。

世理「あなたたちにはがっかりね」

華奈「うわー…きっついねー」

世理「あなたたちにはがっかりね？」

ぐさぐさっと刃物が心臓に突き刺さる感覚を覚えた。
二度同じような事を言われた華奈と出雲は苦笑を浮かべる。
このように世理ちゃんはAがいないと冷たいのだ。
別にどうこう言うわけじゃないけどさぁ。

出雲「……ホンマあんたの心、永久凍土やな」

華奈「ツンドラの女だ、ツンドラ」

出雲「華奈の言う通りやな」

華奈と出雲がそう言っていると世理ちゃんはドアを開けて溜息を溢しながら外に出て来た。