吠舞羅のお姫様 (ページ30)

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-Aside-

アンナ「名前どうしよう」

藤島「その前に餌やらないと」

出雲「『ちょっと待てえ!!』」

馬に駆け寄って嬉しそうな声をあげる2人に私と出雲は制止の声を上げた。
私と出雲の後ろにいる華奈と多々良に関しては冷や汗を流している。
まさか馬だとは思ってなかった…。

出雲「馬か!馬はアカンわ!」

『元の場所に返してらっしゃい!』

アンナ「さっきはいいって…」

アンナのうるうるとした瞳にうう…と言葉を詰まらせる私と出雲。
結果。

ゴンゴンゴンと音がしてふあ…と欠伸を溢しながら尊が下りてきた。

尊「頭いて…A、水…」

頭を抑えながらドサッとカウンターの椅子に腰を下ろす尊。
するとすぐ隣で大きなたらいで水を飲んでいる馬に気付いて尊は動きを止めた。

出雲「なんで馬が落ちてんねん…。それでなんでそれを拾うって発想になんねんな…アホしかおらんのかウチは…」

馬を挟んだ向こうでブツブツと言う出雲。

多々良「まーまー、いい馬じゃない。ほらっ毛並みとかツヤツヤで」

出雲「おまえの慰めはいらんわ」

そのやりとりを見ながら私は『はい、尊』と横から尊に水の入ったコップを渡した。
まぁ、結局はアンナのあの眼差しにあれ以上言えるわけもなく、出雲は渋々馬をここに置くことに決めた。
“仕方なく”だが。

尊「なんだアレ…」

『あー…まぁ、アンナと藤島が拾ってきたらしくて…』

アンナ「ミコト!サヤカ!」

尊に説明しようとしているとアンナがこっちに駆け寄ってきた。
アンナの方へと振り返る私と尊。

アンナ「名前!つけて!」

キラキラとした眼差しで命名と書かれた紙を持ちながら見上げてくるアンナに尊は馬を見た。
馬はキリッとした顔で尊を見ている。
それを見て尊は。

尊「…………馬刺し」

ぼそっと言った。
ガーンとショックを受ける馬とアンナ。
さすがに馬刺しはちょっと…。と私はショックを受けた顔で服を摑んでくるアンナを見てバシッと尊の頭を叩いた。
「いてっ」と声をあげる尊に多々良があははと笑いながら「尖ったセンスだね!」と言う。

出雲「ロースにモモにヒレ。全部位揃てるわ。今日はごちそうやなぁ。はは…」

華奈「ああ、それいいね!」

出雲は疲れた顔でそう言うが華奈に至ってはただ馬刺しが食べたいがために言った言葉だろう。
だが、アンナにとってはそれはショックだったらしい。
ガーンとショックを受けた顔で華奈と出雲を見ている。

尊「…つかその馬」

尊が馬を見た時。