吠舞羅のお姫様 (ページ29)

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-華奈side-

多々良「5月10日 17時30分」

店へと入って来たのは藤島とアンナだった。
華奈はちょうど2人が入ってきたのを見て、雑誌から顔を上げる。

アンナ「イズモ」

出雲「なんや2人揃って」

アンナ「動物飼ってもいい？」

急なアンナのお願いに華奈と出雲は顔を見合わせた。
なんだなんだ。

出雲「今度はなんなん。また人間やなんて言わへんやろな」

藤島「いや…人間じゃなくて…」

アンナ「ダメ？」

アンナのキラキラした眼差しに出雲はうっ…と言葉を詰まらせた。
それに耐えきれなくなったのか出雲は華奈と多々良の方に顔を向けた。

出雲「…おまえたちもなんか言えや」

多々良「いいんじゃない？俺も面倒見るよ」

華奈「華奈もー」

いつの間にか華奈の隣にカメラを回していた多々良がいた。
その時、2階の方から足音が聞こえてきて、顔を向けるとちょうど欠伸を溢しながらAが下りてきたところだった。
学校が終わってすぐにここに来た華奈とAだが、Aは眠いと言って2階で尊と一緒に寝ていたのだ。
5月になったため、青いブレザーに白いカーディガン、そしていつものスカートの制服は、寝るときに脱いだのであろう。
ブレーザーは着ておらず、青いブラウスの上にカーディガンを羽織った格好へと変わっていた。
華奈はカーディガンを脱いで、ピンク色のブラウスを3回だけ折ってるけどね。
アンナはAが下りて来たのを見るとタタッと駆け寄った。

アンナ「サヤカ。動物飼ってもいい？」

『え？』

アンナの言葉にAの視線が此方に向いた。
多々良がカメラを向けつつ笑みを浮かべて、出雲が疲れたような顔をしている横で華奈がハハ…と力なく笑うと何となく状況を察したらしい。

『私に聞かれてもアレなんだけど…。まぁ、出雲がいいって言うならいいんじゃない？』

アンナ「本当!?」

キラキラと目を輝かせるアンナの頭を撫でながらAの視線が出雲に向く。
すると、出雲ははー…とため息を吐いた。

出雲「…しゃーないな」

アンナ「!」

アンナはその言葉に嬉しそうな顔をすると、Aの手を引っ張ってドアへと駆けて行った。
その後を出雲と華奈と多々良と藤島が追う。

『まあ犬猫の1匹や2匹なら…』

アンナに引っ張られながらカチャとAがドアを開ける。
その瞬間。

出雲,多々良,華奈「『……』」

店の前には1頭の馬がいて、思わず華奈と出雲と多々良とAは固まった。
え、動物って馬のことなの…？