第1話 「吠舞羅(前編)」 ページ3
-華奈side-
これは幸福な物語だ。
「ここか…」
帽子をかぶった男が“HOMRA”と書いてある店の前に立っていた。
キュ…と帽子をかぶり直して、ドアを押すと、それはギギギギ…と古びた音を立てながら開いた。
「ちぃーっす…」
入ってきた男を見て、出雲とカウンターに座っていた華奈は男を振り返った。
華奈が「あ」と声を洩らすと、出雲は愛想よくニコッと笑う。
出雲「いらっしゃいませ」
「…あのう、ここで吠舞羅に入れるって聞いたんですけど」
多々良「あんたが赤城翔平くんだね?」
ずっとビデオを撮っていた多々良が急に声をかけると、赤城翔平くんは驚いてバッと振り返った。
ジーっとまじかで撮る多々良に赤城翔平くんは若干引き気味である。
多々良「話は聞いてるよー。ささっ、ま、奥へ奥へ」
翔平「誰だあんた。なっ何撮ってんの!?」
華奈「多々良、急に撮ったら驚くよ」
華奈がそう言うと多々良は愛想の良いにへらとした笑みを浮かべた。
ビデオを片手に赤城翔平くんと握手を交わす。
多々良「どうも。十束多々良です。仲間になるかも な奴の“初めまして”は記録しとかないとな」
翔平「はぁ…」
八田「あ。お前が吠舞羅に入りたいって奴か」
多々良の後ろからひょこっと顔を出した八田ちゃんは「ふーん」と言いながらじろじろと翔平くんを見た。
華奈はそれを横目に見ながら出雲が淹れてくれた紅茶を飲む。
八田「けど志望者全員入れるわけじゃねーぜ?もしウチにふさわしくなかったら…無傷じゃ済まねーかもな?」
八田ちゃんの言葉に翔平くんは少し狼狽えた。
翔平「かっ覚悟の上っすよ」
出雲「八田ちゃん、むやみに脅かしたりなや」
華奈「そうだよ、八田ちゃん。可哀相でしょ」
八田「へっ。どーよ?この新入り候補」
八田ちゃんはグイッと翔平くんの肩を押して、カウンターにいた鎌本、さんちゃん、千歳に見せた。
振り返ったとたん、さんちゃんと翔平くんの目がバチリと合う。
翔平「さんちゃん!?」
さん「翔平!?」
何?知り合い?
翔平「うっわ、マジか。久しぶり!まさか吠舞羅のメンバーだったり?すっげー偶然!でもさんちゃんの顔見て安心したわー。俺、めちゃくちゃ緊張してたからさ」
八田「んだよ、坂東の知り合いか?」
八田ちゃんが後ろからそう言うと、翔平くんはガシッとさんちゃんと肩を組んだ。
翔平「コイツ、俺の幼なじみなんす!ガキの頃よく遊んで超仲良くて!」
へぇ、華奈とAみたいな?
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かなと - 違反だということを少しは意識して下さい (2019年7月24日 8時) (レス) id: 8e417a7b51 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年7月24日 8時) (レス) id: 8e417a7b51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さきっち | 作成日時:2019年7月24日 8時